022 スクールカースト
そんなルーシを見かねたのか、それとも偶然みかけたか、メリットが現れた。ルーシは彼女にぶつかりそうになるが、かろうじて交わす。その代わりに衝突した壁がへこんだものの、この幼女は気にする素振りも見せない。
「アンタ、なにやってるの?」
「タバコが吸いたいんだよ!! 見りゃ分かるだろうが!!」
「大声出さない。ほら、みんなアンタを見てる。悪い意味で」
「あァ!? なに見ているんだい!? そんなに面白いか!?」
「錯乱し過ぎ……。ほら、校舎裏行くよ」
これにはメリットも呆れ顔。彼女を引き連れ、校舎裏へと向かっていく。
*
「はーっ、うめェッ」
最前とは打って変わり、ルーシはいつもどおりの冷静な雰囲気を取り戻したようだ。しかし、本当に美味しそうにタバコをくわえる幼女というのは、どうにもなれない。メリットは怪訝な目つきで彼女を見つめていた。
「なんだ? 顔になにかついているか?」
「いや、アンタ自分の歳考えたことある?」
「メリット、イマドキは年齢も自分で決められるんだぞ。エイジレスっていうんだ」
「意味分かんない」メリットはメンソールタバコを地面に投げ捨てた。「私が言うのもなんだけど、タバコ吸っても良いことないのに」
「なら、なんでオマエは喫煙しているんだよ~」無邪気な笑みを浮かべる。
「なんだって良いでしょ。傍から見れば、アンタが吸ってるほうがおかしい」
そんな黄昏時。メリットはいくつかヒトの来ない場所を知っているようで、ここにも誰かが来るとは思えない。ある意味高校生らしいような気もするが、そもそも隠れるくらいなら吸うのもやめてしまえ、とも感じる。
「釣れないヤツだな。で、きょうの授業はもう終わった。遊びに行こう」
「はぁ?」
「なんだ? 嫌なのか?」
「悪いけど、幼女といっしょに遊ぶ趣味はない」
「だから、エイジレスだよ。私はこんな姿で10歳だけど、実際は16歳とかそこら辺だ」
本当は25歳の男性だが、最近その記憶も薄れてきた。色々刺激的だからかもしれない。
「だいたい、遊ぶっていってもなにするの?」
「ギャンブルとか? カジノ行こうぜ」
「ツッコまないのは、優しさから来てることをお忘れなく」
「なんだよ、釣れないなぁ」ルーシはムスッと口をふくらませる。「だったら、スポーツ観戦でもするか? それとも、やるか。サッカーならできるぞ」
「まぁ、運動にはちょうど良いかも。MIH学園内にサッカー場あるし」
「だろ? そっち行こうぜ。案内してくれ」
頬の赤い幼女がタバコ1本で元気になるあたり、この国は本当に終わりかもしれない、と思い、メリットは深い溜め息をつく。
そんなとき、
『キャメル・レイノルズ』
より着信があった。ルーシも落ち着いているため、特段なにか考えることなく電話へ出る。
「はい、キャメルお姉ちゃん」
なぜかメリットがポカンと口を開け始めたが、気にせず会話を続ける。
「えぇ、ちょっとお花摘みに。今誰かといっしょにいる? メリットってヒトといっしょにいますよ。代わりますか? 良いですよ」
一旦こちら側のマイクをオフにし、ルーシはメリットにスマホを渡す。
「き、キャメル……?」
「私の名字、知っているだろ。キャメルは姉みたいなものだよ」
「私、キャメル苦手なんだけど」
「なんで? 良いヒトではあるだろ」
「いや、スクールカーストって知らないの? アンタ」
「知っているよ。ほら」
スマホを渡され、いよいよメリットの逃げ場はなくなった。
「ぁ、こ、こんにちは」
(なにブルっているんだ?)
「はい、ルーシさんとは大変仲良くさせていただいておりまして……なんで敬語を使うの、って? いや、そんなつもりはないで、ないよ」
(面白ェもの見られたな。お姉ちゃんをなんだと思っているんだか)




