020 1040億円の幼女
ルーシはアークの話を聞き、眉をひそめた。
「〝派閥〟に〝ギャング〟か。ここは本当に学校かよ」
アークは苦笑いを浮かべながら、答える。
「MIH学園はそういう場所さ。アンゲルスNo.1の学園の裏側には、色んな勢力がぶつかりあってる。それだけお金が動いてるとも言えるね」
「なるほど」ルーシは腕を組みながら、「で? オマエの派閥ってヤツはなにをしているんだい?」
「ぼくの派閥は、被差別民のオタクたちの集まりだよ。ランクBのぼくがトップやらなきゃいけないくらいには、弱者の集まりだけどね」
「弱者に価値はないしなぁ」
「一刀両断だね」
「思ったことを言っただけなのでね」
ルーシはニヤリと笑い、苦虫を噛み潰したかのような表情のアークへ告げる。
「そのウィンストンって野郎は、どこにいるんだ?」
アークは彼の居場所を知っているはずだ。同じ学園に通っていて、つい最近詰められたのだから。なので、アークはすこし躊躇し、やがて、
「言えないよ。君みたいな幼女が触れて良いヤマじゃない」
真剣な眼差しでそう答える。
「つまらないなぁ。復讐を手伝ってやろうと思ったのに」
「というか、外にヒト待たせてるんでしょ? 早く行ったほうが良いんじゃないの?」
「そんなに私と話したくないか?」ルーシは注意深くアークの目を見る。「まあ良いや。連絡先、交換しておこう」スマートフォンを取り出した。
アークもそれに反応し、ふたりは携帯電話を重ね合わせる。そして、ルーシとアークは互いに怪訝そうな表情になった。
(アーク・ロイヤル? 王族なのか?)
(ルーシ・レイノルズ? クールくんといっしょにいたのって、親子だからなの?)
目をあわせ、ふたりは同時に、「何者なの──」と言ってしまう。
「ああ、先どうぞ」ルーシが譲る。
「君、キャメルと親戚なの?」
「まあな。だから、クール・レイノルズといっしょにいたんだよ」
「ということは、クールくんの娘?」
「ああ」
「あのヒト、誰かの親になれると思ってなかったよ」
本心からそう思っていそうだった。まあ、クールと関わった者はほとんどみんなそう感じるだろう。
「じゃあ、私からひとつ。オマエ、王族なの?」
「正確には〝元〟王族だよ。ここ、共和国でしょ?」
「処刑されなかったのは、不幸中の幸いか?」
「……、まあ、ルーシくらいの年齢なら知らなくてもおかしくないか。ぼくら元王族は、王家の大権を手放す代わりに、政府からお金もらってるんだよ。というか、話すと長くなるから、授業で習って」
「そうするよ」
見た目の年齢のおかげで、かなり訝られながらもこの場は切り抜けられた。
「じゃあな、アーク。また会おう」
「うん。ルーシ」
パーラの待つ職員用後者前へ、歩いていく。
*
「〝評定金額〟と学内序列は比例するとも限らんが……」
青く錆びているような髪を、日本で言うところのホストのように伸ばす少年がいる。彼は、MIH学園の裏庭で、学内公示をスマートフォンで眺めていた。
「首席様にトリプルスコア以上つける幼女か。まあ、あのクール・レイノルズの娘だって言うなら、期待値込みかもな」
名をウィンストン。今、メイド・イン・ヘブン学園の裏側を取り仕切っている少年だ。
そんな彼は、本日入学してきた幼女に目をつけていた。
「評定金額10億4000万メニー、か。ま、値札だけがすべてじゃねェことを教えてやらんとなぁ」
MIH学園に入学した際、ルーシには〝評定金額〟がつけられていた。
その額、日本円換算でおおよそ、1040億円。




