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約束の木の下で ―欠片―  作者: ぽんこつ


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絵奏ちゃんの恋

白い花びらは。

あの時の美しさのまま。

パウチの中でほほえんでいる。 

「梨花ちゃん、何見てるの?」

前の席の絵奏ちゃんが振り返って不思議そうに私を見ていた。

「え? 何でもないよ」

慌てて。

スマホケースにしまおうとしたら。パウチを絵奏ちゃんの指が挟む。

「ふーん。綺麗な花だね」

白いしなやかな指先で。

パウチを裏表にひっくり返している。

「なんて花?」

「日日草だよ」

「へー。面白い名前。はい」

絵奏ちゃんから受け取ったパウチをスマホケースにしまう。

ぎーっと。

椅子を回して。

私に向かって座り直した絵奏ちゃん。

視線がチラリと横に流れて息を吸う。

「あのさ、久世くんのこと、どう想う?」

「ん? サッカー部の?」

「うん」

「どうして?」

「そりゃあ、ほら」

両手で髪を耳に掛けて。

肩をすぼめた絵奏ちゃん。

「ん?」

首をかしげる私。

ため息をこぼす絵奏ちゃん。

「梨花ちゃんってさ、好きな人いないの?」

「え!? なんで」

「いるんだ!」

「え? いないよ」

目を伏せた私を、絵奏ちゃんの瞳が下からのぞいてくる。

じろっと。

一睨みして。

スッーと手を残しながら。

背筋を伸ばした。

顔の横で手招きをする。

私がそっと顔を近づけると。

「久世くんのこと好きなんだ」

耳元で小さな声が囁いた。

「いいんじゃない……絵奏ちゃんと久世くんお似合いだと想う」

「本当に!?」

「うん」

「でもさ、ライバル多いんだよね。それに……」

「どうしたの?」

「昨日ね、樋山先輩から告られたの」

「樋山先輩?」

「ほらぁ、バレー部のエースの」

「ああ」

とは、口にしたものの。

全然顔は想い出せない。

「どうしたらいい?」

「どうしたらって。絵奏ちゃんが好きなのは久世くんなんでしょ?」

「うん」

「なら……」

「でもさ、久世くんに振られるかもしれないし。そしたら樋山先輩は私を好きってら想ってくれてるでしょ」

「ふん。じゃあ、先輩にするの?」

「だから、悩んでるの」

両手で頬杖をついて。

また、ため息をこぼす絵奏ちゃん。

「梨花ちゃんなら、どうする?」

「私? そうだな。私なら好きな人に想いを伝える……かな」

私自身は言えないかも。

だけど。

絵奏ちゃんを応援したくて。

自分もいずれ言えたらいいなって。

「振られても?」

「……うん。好きな想いを燻らせるのは辛いし、可哀想かな」

「じゃあ、カッコいい男の子から告白されても梨花ちゃんは断るの?」

「うん。好きじゃないから」

「じゃあ、梨花ちゃん、どんな人がタイプなの? どうしたら好きになるの?」

「え? 私のことはいいじゃん。絵奏ちゃんの話でしょ?」

「気になる。だって梨花ちゃんって、かわいいのに、なんかそういうこと言いづらい雰囲気出てるんだよね」

「そう? なの?」

「梨花ちゃんのこと気になってる男子いるし」

「え?」

「ねえねえ、教えて?」

興味津々の絵奏ちゃん。

瞳をうるうるさせて。

とってもかわいい。

「じゃあ、絵奏ちゃんはどうして久世くんのこと好きになったの?」

「ああ、最初はなんとなくいいなぁって想ってて。話とかしても楽しいし」

「うん」

「こないだの雨の日、私たち新体操部とサッカー部がさ体育館で一緒になったの」

「ふーん」

「でさ、久世くん達はステージの上で練習してて、ボールが私に飛んできてぶつかって、転んじゃって」

「大丈夫だったの?」

「うん。久世くんが謝りに来てくれて」

「それで?」

「お詫びにって。ジュース買ってきてくれたんだ」

「へー」

「そのあと、練習中になんか視線を感じて……」

「久世くんなんだ」

「そうなの、なんか目が合って」

「絵奏ちゃん。きっと久世くんも絵奏ちゃんのこと気になってるんじゃない?」

「そう? そう想う? そうかな?」

「なら、答えは出てるじゃん」

「でもさ、私から告白したらさなんかあれかなって。言ってもらいたいって想ったり」

「そっか。でもさ、どっちにしても樋山先輩には、ちゃんと断った方がいいと想うよ」

「……うん」

キーンコーンカーンコーン……

昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴る。

絵奏ちゃんはくるっと前に向き直る。

普段、姿勢もよくて。

しゃんとしている絵奏ちゃんも。

恋患いにかかったら。

かわいい女の子。

絵奏ちゃんの恋が叶いますように。

前の背中に向かって。

心の中で呟いた。

お読み頂きありがとうございます。

感謝しています。

*時系列的に、この後のエピは「約束の木の下で―風と雪の中に―」になります。「風と雪の中に」は、「約束の木の下で―忘れられない初恋の記憶―」のネタバレを含みます。

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