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約束の木の下で ―欠片―  作者: ぽんこつ


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切っても切れないもの

ミーン、ミーン……

ここは蝉にとっても。

人々にとっても。

憩いの場。

住宅の合間。

滑り台とブランコしかない。

小さな公園。

濃い緑の葉がゆらゆらと光を跳ね返し。

隙間からこぼれた光の粒は地面に星空を作っている。

それは木陰のベンチに座っている私の足元にも。

風がそよぐ度にまだらが煌めく。

私は本を閉じて空気を吸い込む。

微かに木の香りがした。

切った髪の毛先を摘まんで。

ふっと。

息を吹きかけた。

胸元までの髪を肩先まで切ったんだ。

小学校の頃から。

ずっと同じ長さだったから。

ハサミが入った時は。

なんかチクッとしたけと。

少しだけ軽くなった頭に戸惑った。

髪を切ろうと想ったきっかけは特になくて。

しいてあげれば。

大人というか。

お姉さんというか。

女の子として。

かわいくいたいなって。

「ともくん、届く?」

不意に届く女の子の声。

「うーん。上の方過ぎるかも」 

帽子のつばを上げて。

木を見つめる男の子。

小学生くらいの二人。

女の子は麦わら帽子のてっぺんを片手で押さえながら。

木を見上げている。

男の子が、そっと忍び足で幹に近づいて。

虫取り網を構えた瞬間。

気持ちよく鳴いていた鳴き声は何処かへと飛び去った。

「くそー。また逃げられた」

「でもでも、惜しかったよ」

「よし、あっち見に行こう」

男の子が歩き出す。

女の子が後を追うように。

一歩踏み出した時。

「わっ!」

あっ!

足が滑って。

バランスを崩した女の子が前のめりに。

慌てて私も立ち上がる。

「大丈夫か?」

サッと。

虫取り網を投げ捨て。

風のように駆け寄った男の子が、女の子をしっかり抱き止めていた。

その拍子に、麦わら帽子がふわりと私の方に舞い落ちた。

「ああ、ありがとうともくん」

「おう、気を付けろよまゆ。痛いとこないか?」

「うん。平気」

微笑ましい会話を耳にしながら。

私はしゃがんで。

麦わら帽子を手に取った。

地面についた部分を軽くはたく。

懐かしいつるつるした手触り。

いぐさに近い、香ばしい匂い。

ゆっくりと立ち上がる。

私に気がついた女の子。

「あ、ありがとうございます」

両腕をぴーんと伸ばして。

ぴょんと頭を下げる。

「はい、どうぞ」

私は女の子に帽子を被せてあげる。

「お姉ちゃん、ありがとう」

女の子は、両手でつばをつまんで。

にかっと。

私を見上げた。

「ありがとうございます」

男の子は帽子を脱いで。

お辞儀をする。

「どういたしまして。二人は仲良しさんだね」

顔を見合わせて微笑む二人。

「はい」

声を揃えて返事をした。

男の子が差し出した手を迷いなく握る女の子。

「バイバイ」

小さな手をはち切れんばかりに振っていた。

「またね」

二人の後ろ姿を目で追う。

指差しながら。

蝉の声のする方へ歩いて行く。

さらさら……

梢が震えて。

女の子が、麦わら帽子を手で押さえる。

私の髪も撫でて。

ふと笑いが込み上げる私。

無意識に頭に手をやっていたから。



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