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約束の木の下で ―欠片―  作者: ぽんこつ


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20/28

やどる

ザー……

にわかに降りだした雨。

幾重もの筋がアスファルトを叩いて。

四方に飛沫をあげる。

跳ねた雫が足に冷たさを運ぶ。

ハンドタオルで手や腕を拭いて。

濡れた髪を拭う。

昔なら夕立。

今はゲリラ豪雨。

道路を挟んだ向かいの家々も。

心なしかぼやけて見える。

参ったな……

今度から折り畳みの傘を持ち歩こう。

校門を出るまでは青空が広がっていた。

東の空から暗く沈んだ雲が立ち込めてきて。

雨宿り。


店仕舞いしたであろう商店の庇の中にいる。

「ハックション」

蒸し暑かった空気も。

温度が下がって。

普通なら涼しいはずの風も。

雨を含んだワイシャツが、肌に張りついて寒さに変える。

時々、傘を差した生徒が足早に通り過ぎていく。

私は腕を抱くようにさする。

容赦なく雨音だけが鳴り響く。

こんな時。

美瑠が一緒だったらな。

なんて。

どうにもならないことを考えて。

首を傾げて苦笑いひとつ。

仲良くなった絵奏えなちゃんは部活だし。

まだ、駅までは距離があるし。

学校に戻るにもこの雨じゃ……


ふと、横を見たら。

古めかしい長椅子のベンチがあった。

その隣には、茶色のシートのかかった冷蔵庫らしきもの。

アイスクリームとか。

入れていたのかもしれない。

錆ついたシャッター。

ねずみ色が至るところ剥がれ落ちていた。

そこに、白く書かれた文字が微かに浮かんでいた。

「駄……菓子、まる……い? 駄菓子、まるい」

駄菓子屋さんだったんだ……


ポケットからスマホを出して。

天気予報を確認してみる。

あと……

30分くらいは雨みたい。

頬を膨らませて。

肩を落とす。

スマホケースの隙間から。

顔をのぞかせたパウチが目に入る。

そっと引き抜く。

白い花びらが。

まるで晴れているかの様に眩しい。

あの時は。

陽射しを浴びて。

風を受けて。

何も気にしないで。

ただ――

そのままに。

そういえば。

雨降らなかったな。

彼は晴れ男なのかな。

パウチとスマホを胸に抱いて。

目を閉じた。

瞬間。

音が消えて。

フワッと彼の笑顔が瞼の裏に――

ハッとして目を開ける。

あれ?

僅かに差し込む陽射しに。

雨粒が光る。

雨足も。

気持ち落ち着いたように見えて。

私はパウチを仕舞って。

スマホをポケットに入れた。

背負っていたリュックを頭の上に。


私は雨の中へと走りだす。

ひやりとした湿った空気がまとわりついてくるけれど。

こころはどこか晴れやかだった。

温度も。

場所も。

天気さえ違うけど。

あの風の中にいるような感覚を味わえているから。

理由なんて分からない。

ただ、私のこころが似ている。

そう、感じているから。

ぱちゃ、ぱちゃ……

足音を刻む度に。

雨が靴の中に染みるけど。

「わっ!」

パシャン!

水溜まりで。

跳ね返しが冷たい。

でも。

そのまま駆け足。

少し息があがって。

唾を飲み込んだ。

視界の先が赤く光って。

信号か……

近づいていくと。

ピポ、ピポ……

丁度青に変わる。

ほらね。

なんかそういうことなんだ。

私はそのまま駅のコンコースに駆け込む。

リュックを抱きしめながら。

息を整える。

振り返ると。

一瞬、辺りが白く光る。

ゴロゴロ……

空が鳴いて。

バリバリ……

轟く雷。

一段、強くなった雨足は、霧のように街並みをぼかしていった。

お読み頂きありがとうございます。

感謝しています。

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