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約束の木の下で ―欠片―  作者: ぽんこつ


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私の大切な場所

教室の窓の外。

秋の清々しい高く青い空。

お日様に照らされた校庭が白く輝いている。

今日は小学生最後の授業参観。

お父さんとお母さんは、私の席がある列の後ろにいる。

今、前の席の永山さんが、作文を読み上げている。

次が私。

机の上の作文用紙に視線を落として。

少しだけはにかんで。

両手を胸にそっとあてた。

パチパチ……

拍手がわいて。

「じゃあ次は、倉科さん」

先生の声が私を見つめる。

「はい」

ぎいっ。

椅子をならして立ち上がる。

両手でそっと作文用紙を掴んで。

振り返る。

お父さんとお母さんと目があって。

微笑みをもらって。

前を向いた。


「『私の大切な場所』

六年二組。

倉科梨花くらしな りか


もう天国に行ってしまった祖母。

そんな祖母が住んでいた夕凪島は、私にとって天国のような、楽園のような島でした。

でも、夏の姿しか知りません。

夏休みにしか行ったことがないからです。

でも、しっかりこころには残っています。

目が覚めて外に出たら、辺り一面に蝉の大合唱。

ミンミン。

ニーニー。

ジージー。

ツクツク。

一生懸命に歌っている。

少し歩いたら。

サラサラ。

カサカサ。

すすきや木の枝が揺れて。

海の匂いを運ぶ潮風。

手で髪を押さえながら見つめる先。

とろんとした溶けそうな水面を湛えた瀬戸内海。

視線を上げれば、クレヨンで塗りつぶしたような真っ青な空。

綿菓子のような白い雲が自由に形を変えながら泳いでいて。

ざあー、ざざー……

止むことのない波音が私の呼吸と重なると、まるでこの世界の一部になったように錯覚します。

でも、勘違いでもなくて、ちゃんと自然の一部なんだと教えてくれているようでした。

街を歩いていると誰かが、

「おはよう」

と、声を掛けてくれる。

知らない人でも。

花も。

猫も。

みんな、私に微笑みかけてくれているようでした。


その島のお気に入りの場所があります。

私が初めて島を訪れた時に、祖母が手を引いて連れて行ってくれました。

町や港が見渡せる、高台にある公園。

二台のブランコがあります。

そこに座って景色をよく眺めていました。

空も海も山も遠くて近くて。

蝶やトンボが踊っていて。

鳥や蝉が歌っていて。

空には飛行機。

海には沢山の船。

夏の日差しのせいなのか、どこかしこも眩しいくらい煌いていました。


その公園の裏手の森の中。

小さな神社の境内にそびえるクスノキがあります。

大きく広げた枝に空を覆いつくすようなたくさんの葉っぱ。

葉の間には光の粒が夜空の星のようにきらきらとしています。

ちりん、ちりん。

境内の軒先に吊るされた風鈴が鳴って。

かさかさ。

木々が揺れて。

土や草の匂いに包まれているとホッとする気持ちになるのです。


私が両手を広げても抱えられない太い大きな幹。

そこに巻かれた縄には、想いを記した絵馬や短冊が、たくさんつけられています。

この木は、島の人達から『約束の木』と呼ばれていて。

お願いしたことは叶うといわれているんです。

その中で小さな絵馬を見つけました。

『おとうとのびょうきがなおりますように』

って。

書かれていました。

私もお祈りしました。

書いた人の優しい気持ちに応えてあげたくて。

その絵馬のように、多くの人たちの願いが叶いますように。


私の大切な場所は、私が優しくなれる場所でした。

私が笑っていられる時間でした。

祖母のことも、胸にある想いも、これからも大切にしていきたいと思います。」

お読み頂きありがとうございます_(._.)_。

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