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約束の木の下で ―欠片―  作者: ぽんこつ


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18/27

したためて

美瑠とは、高校は別々になった。

美瑠は家政科がある東城高校に。

私は大学の付属の明星学園。

国文学科で有名な明星大学に行きたかったから。

本が好きだし、書くことも好きになってきて。

ちゃんと勉強したくなってね。


物想う、友と過ごした日々一つ、想い出の名のたからもの、道こそたがえど、こころは一つ。

あっ……

過ぎし日の、風も匂いもぬくもりも、揺れる毛先の髪一つ、残りこそすれ、消え去ることもない。

んー。

どうかな。

風匂う、甘き花房膨らませ、身をくるみし新衣にいごろも、姿見せたき人一人、彼の地に届け私の想い。


ペンをカチカチと鳴らして。

読み返して。

そっと、ペンを置いて。

頬杖をつく。

壁にかけてある制服を見つめた。

紺のブレザーに、白いボタンシャツ。

紺と青のチェックのリボンタイ。

同じ色のチェックのプリーツスカート。

彼は――

どんな姿なんだろう?

私はスマホを手に取った。

今まで何度なく検索したから。

夕凪島と彼の名前。

秋倉真治《秋倉 しんじ》はスマホも覚えている。

夕凪島高校の制服を調べる。

男の子は紺のブレザー。

紺地に斜めにオリーブ色のラインが入ったネクタイ。

グレーのパンツ。

女の子も紺のブレザー。

紺のプリーツスカート。

オリーブ色のリボンタイ。

想像してみて……

笑ってしまう。

だって、10歳の頃の彼しか知らないから。

それに、夕凪島の高校に進学するかも分からないのに。

でも。

その制服を着た私は想像できる。

一緒に……

はにかんで、スマホを伏せた。

スッーと、机に差し込んできた陽射し。

私の手を照らして。

爪を光らせて。

ぬくもりを運んできた。

「あったかい」

春が来れば。

夏が来る。

当たり前の季節の流れ。

あと……

今年で折り返しだ。

約束の月日まで。


時間は今この瞬間も。

静かに。

確かに。

刻一刻と通り過ぎて行く。

やっと。

ううん。

まだ。

これから……

五回の夏が来た時。

約束の時。


ほっと。

吐息をこぼして。

机に突っ伏した。

ダメだ。

いい言葉が想い浮かばないや。


頭もこころもふわふわして。

わたあめのように。

少し舐めたらなくなっちゃう。

でも、味も匂いも消えなくて。

想い出しては。

そわそわ。

ふわふわ。

私の頭もこころも。

夏の空を泳ぐ白い雲のように。

漂って。

ただ、酔って。


なんかいいかも。

体を起こして。

ペンを握る。

募る。

慕う。

どうして草冠なんだろう?

でも。

いい響き。


あなたと交わした約束は。

想ったよりも長くて。

想ったよりも深く。

私のこころの大切な場所で。

宵に瞬く。

一番星のように。

忘れないように。

見失わないように。

約束の道標として灯っている。

時々。

それでも。

雲隠れして。

不安に覆われて。

約束のことも。

私のことも。

忘れてしまって。

誰かと……

なんてね。

過ることも。

苦しくなることも。

それでも。

日々。

想いも。

切なさも。

同じように募っていく。

膨らんでいく。

だって。

しょうがない。

初めて好きになった人。

慕い続けてる人。

私の想いは誰にも壊せない。

失くせるのは私だけなんだから。


初恋――

だからね。


息を吐いて。

立ち上がる。

私はトレーナーの上下を脱いで。

ワイシャツに袖を通す。

リボンタイを付けて。

スカートを履く。

ブレザーを羽織って。

鏡の前に立つ。

ブレザーのボタンを止めて。

髪を耳にかけた。

ぎこちない微笑みを浮かべる。

女の子が見つめ返していた。



お読み頂きありがとうございます。

感謝しています。

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