年のはじめ
家族3人で過ごす。
いつものお正月。
近所の神社に初詣に行って。
引いたおみくじは中吉。
別に書いてあることを信じてる訳じゃないけど。
視線が向かったのは――
恋愛について。
『いい出会い有り』
だった。
仕事はしていないのに。
『順調』
で。
金運は、
『散財に注意』
それから、お父さんとお母さんから、お年玉をもらった。
ありがたくて。
私はそれを貯金する。
この時点でおみくじは外れてる。
お雑煮を食べて。
焼いたお餅を三つも入れてもらった。
香ばしくて美味しいんだ。
今はリビングでソファに座り。
テレビを観ている。
占い特集みたいだった。
画面の中では。
着物姿の艶やかなアナウンサーや陽気なタレントさんたちが、一喜一憂している。
この手の占いも、特に気にしたことはない。
「かに座は6位だってよお父さん」
トイレから戻って来たお父さんは、
「まあ、真ん中だろ? いいじゃないか」
斜向かいに腰掛けた。
「あら、獅子座は4位だって」
まんざらでもなさそうな、隣に座っているお母さん。
「結局、我が家では私が最下位か」
「おとめ座は8位か。まあ、8はいい数字だ」
プッシュ。
お父さんは、缶ビールのプルタブを開けた。
「あ、お父さん、お酌してあげる」
「おっ、そうか、悪いな」
目尻が下がって。
グラスを傾けるお父さん。
言葉より、表情が物語っている。
「ビールの泡って美味しそう」
琥珀色の液体を注ぐ。
それを塞ぐように、厚みを増す白いクリームのような泡沫。
「梨花、飲んでみるか?」
私はぶんぶんと首を振る。
「そうか、梨花が、大人になっても、今みたいにお酌してくれるかな」
ごくごくと喉を鳴らすお父さん。
「いいよ。ふふ。お父さん、おじいちゃんみたいだよ」
「ん?」
「白い髭みたいになってるよ」
私は自分の鼻の下に人差し指を添えた。
「そうか」
お父さんは、にこにこしながら、舌で泡を舐めた。
「ちょっと、トイレ行ってくる」
私は立ち上がって。
洗面所に向かった。
鏡の前で。
人差し指を鼻の下に添えてみた。
指を横に動かしてみる。
懐かしさが、微笑みを連れてきた。
そう。
鼻の下をこする。
彼のくせ。
今でもしてるのかな?
そう言えば、なに座なんだろう?
私が知ってるのは。
あの5日間の姿だけ。
知らないことばかりなのに。
ね。
髪を耳にかけて。
想いを言葉に忍ばせる。
はつゆめに、すがたはなくとも、はつこいの、きみのしぐさを、真似てみた。
こころに灯る、眩しさの、笑顔を連れて、いとなつかしき。
きみがため、わたしがために、約束の、あいまみえることを、いのりつつ、時に苦しく、時に侘しく、それでも願い想いを抱く、きみのこと、なぜだかわかる、今ならば、きみの瞳も、言葉も、手も、差し出してくれた、こころのかたち。
そのかたちの名前、知ってるよ、昔は知らなかったけど、分かった時に気づけたの、だって、私も差し出した、生まれて初めて、不器用に、想いを込めて。
その名を愛だと呼べるのなら、私はちゃんと受け取った、まっさらでまっすぐな。
私はスマホにメモを打ち込んで。
鏡を見て。
鼻の下をちゃんとこすってみた。
少し頬を染めて。
でも。
どこか、得意気な女の子が笑っていた。
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