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『おばあちゃん、どうして私はおとうさんやおかあさんと一緒にいられないの?』
吐く息が白く、雪が降りそうなくらいある冬の日のこと。冬休み入った私は、自宅から車で30分ほどの祖母の家に預けられていた。荷物には数日分の着替えと、冬休みの宿題。「仕事が忙しいから、しばらくおばあちゃんちで寝泊まりしてね」と母は言い、私ひとりを残して自宅へと帰っていった。
共働きだった両親は忙しく、普段から帰りが遅かった。父と母はすれ違いの生活。ケンカが多かったのは、きっと忙しすぎる仕事が原因で互いにストレスが溜まっていたのだろうと、今なら思える。けれど、まだ幼かった私は大人の事情など分かるはずもなく、ケンカばかりの両親に、もっと仲良くしてほしいと、ずっと思っていた。ケンカをする両親を見ているのは子どもながらに辛かったのだ。
だから、冬休みにおばあちゃんちでしばらく過ごしてねと言われたとき、最初はとても嬉しかった。おばあちゃんは優しくて、私を怒ったりしない。おいしいご飯を作ってくれるし、遊び相手にもなってくれる。
だけど、おばあちゃんちで過ごすようになってから3日も経たないうちに、私はお父さんやお母さんのことが恋しくなった。
『おばあちゃん、どうして私はおとうさんやおかあさんと一緒にいられないの?』
そう私が尋ねたとき、おばあちゃんは一瞬寂しそうな顔をしていたっけ。でも、そのすぐ後に「大丈夫や、すぐ迎えに来るからな」と朗らかに笑い、私にある提案をしてくれた。
『なあ、あかね。今からお買い物行こか。アンタが好きなスイーツ、なんでも買ったるわ』




