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それから天の湯の幹部を招いての試食会が始まるまでの間、私は寝る間も惜しんでメニュー開発に時間を費やした。
どうやら天の湯の幹部である八雲様、蒼真様、熾音様の3名は味の好みもバラバラで、全員の舌を満足させるスイーツを作るのは至難の業だということだった。その上で「お客様が喜ぶスイーツ」を考えるとなると、悩みは尽きない。でも、だからと言って、このまま諦めたくなかった。
「……幹部連中が無理難題を言うのは今に始まったことやないけど、今回は時景様の進退もかかっとるからなぁ。気合い入れて望まんと」
とめ吉さんの言葉に、私も頷いた。メニュー開発には、とめ吉さんだけでなく、ほかの料理人たちも参加してくれることに。みんな本業の仕事の合間に時間を見つけては試食をしてくれたり、アイデアを出し合ってくれたり。特に、いつもまかない弁当を配達しに来てくれていた源さんや貫太さんは、熱心にアドバイスをしてくれた。
「このクリームはもう少し甘さを抑えた方が全体の調和が取れるんじゃないか?」
「今のままだと、見た目がちょっと貧相だから何か飾りを乗せてみてもいいかもな」
とはいえ、そうやって、いろいろな種類のスイーツを作ってみるも、どれも決め手に欠けるものばかりで、なかなか決まらず、焦りだけが募っていった。




