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2

それから美鶴さんに連れられてやってきたのは、中庭の東端。木製テーブルとベンチが備わった屋根付きの東屋があり、私たちはそこで昼休憩を取ることになった。


本館からはやや離れていて、ひっそりと佇む隠れ家的な場所。現に、辺りには誰もおらず、時おり鳥のさえずりが聞こえるだけの、静かなところだった。


「……中庭にこんなところがあったんですね」


一帯に広がる木々の緑が気持ちよく、荒んだ心が少しだけ安らぐ気がした。ふわりと凪ぐ風が生い茂る青い葉を、そよそよと揺らしている。


「本館からも少し離れているし、誰も来ないから私もよく考えごとをしたいときには、ここへ来るの」


美鶴さんはそう言ってにこりと微笑むと、目の前にまかない弁当を広げてくれた。深い赤色のちりめん風呂敷の包を解けば、曲げわっぱの弁当。


縁の坊で働く従業員にはまかないが提供されているのだけれど、別館の従業員宿舎にある食堂で食べない者には、こうやってまかない弁当を配ってくれるのだ。ちなみに私は従業員宿舎にはまだ行けずにいるので、毎回まかない弁当である。


「まあ、今日は人参の花が入っていてかわいいわね」


美鶴さんの弾んだ声に私も手元の弁当を開けてみた。人参のほかには、錦糸卵や絹さや、椎茸なども入っていて、彩り豊かなちらし寿司弁当。いつもよりちょっと豪華な弁当に、思わず頬が緩んだ。二人揃って「いただきます」と手を合わせて食べれば、今日も変わらず美味しくて。元気がなかったはずなのに、気づけば一口、二口と次々に食べている自分がいた。


美鶴さんはそれを見て安心したのか、にこりと笑いながら「美味しいわね」と呟いた。美鶴さんが今日私を誘ってくれたのも、試食会の日から落ち込んでいた私を心配してのことなのだろう。


「……私、毎回まかない弁当を食べるのを楽しみにしてるんです」


その証拠に、私が話し始めれば、優しい眼差しで話を聞いてくれる。

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