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ここまで来ると、なんとなく時景様の言葉は予想がついていたので、ある程度の覚悟はできていた。


ただ、せっかく私のスイーツを美味しいと言って雇ってくれた彼の口から、そんな言葉を言わせてしまったことに、想像以上に堪える自分がいた。


「……あかね」


それでも、こんなときでも私を呼びかける時景様の声は優しげで、それだけで私は泣いてしまいそうになった。


「もう一度、試食会の機会を設けます。それまでに今日の我々からの言葉を自分の中でかみ砕いて、もう一度、貴女が思う美味しい洋菓子を作ってみてください」


時景様はそれだけ言うと、立ち上がってそっと私に近づいてきた。悔しさと不甲斐なさで溢れそうな涙を堪え見上げれば、時景様は小さく頷き、私をじっと見た。ここで泣くな、と言わんばかりに──。


「……だからここで諦めず、我々を唸らせる菓子を作ってみせてください」


続けて「大丈夫、貴女なら必ずできますから」と、時景様はそう言ってくれたけれど、自信を砕かれた私には、すぐに「はい」と答えることができなかった。俯き、両手をギュッと握りしめると、ずんと心が重くなっていくのを感じる。


やっぱり私には無理かもしれない。


そんな弱音が頭をよぎる。今までずっとそうだった。


変わりたい、そう思ってここへやって来たというのに、いつもと同じままでいる自分に、どうしようもなく情けなくなり、気分は一層落ち込んでいくようだった──。

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