表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/110

27

特に、料理長のとめ吉さんの反応は気になった。先ほどからずっと黙ったまま、それはケーキを一口食べたときも同じだった。全員、講評の内容を紙に書き留めているようで、4人がそれぞれに筆を走らせている。


「では、全員食べ終えたので一人ずつ講評をお願いします。まずは料理長のとめ吉殿から」


氷雨さんの言葉に、私はギュッと両手を握りしめた。それからとめ吉さんの方を見て、「よろしくお願いします」と頭を下げる。そして、顔を上げた瞬間──。


「はっきり言って、これではお客様の前に出せへんな」


開口一番にそう言われて、一瞬息が止まった。手を組み、私を見つめるとめ吉さんは真剣な顔をして言う。


「春を感じさせたいのは分かるし、確かに見た目は綺麗や。ただ、桜餡の味が薄すぎるし、塩気が微妙に強くてケーキの甘さと調和も取れとらへん。何より、作り手の技術を主張しようとしすぎて、ケーキ本来の魅力が損なわれとる。こっちの灘の酒を使ったケーキも確かにいい案やけど、そもそもうちに来るお客様の全員が日本酒好きやとは限らん。子どもでも美味しく食べられるもの、となると、これを採用というわけにはいかんやろ」


その言葉にハッとした私。あまりに審査のことに気を取られすぎていて、私は一番大事なことを忘れていた。


「……あんたは誰のために菓子を作るんや?それをもういっぺん考えて作ってもらわんと、ええよとは言われへん。それが、この旅館の料理長を任されとう俺の信念や」


「以上」と締めくくったとめ吉さんに、「ありがとうございました」と頭を下げたけれど、その声は自分の想像以上に小さく聞こえた。


次に、氷雨さん、美鶴さんの講評が続く。二人ともこういうところがいい、と褒めてはくれたけれど、先の3人で最終的にGOサインを出してくれたのは美鶴さんだけだった。みるみる表情が固まっていくのを自分でも感じながら、最後は時景様の講評の番。


「……結論から言うと、私も今回のスイーツではお客様にお出しできないと判断しました」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ