表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/110

15

弥生は側にあった丸椅子に腰かけ、台の上に突っ伏すこととなった。頬を赤らめて、棘がなくなったように、ふにゃふにゃとしている姿は、先ほどまでのツンツンした態度とは大違い。私は向かいの椅子に腰かけて、その様子をじろじろと観察していた。


「なんで、お前は顔色ひとつかわらねぇんだよ……」

「だから飲めるって言ったじゃない」


啖呵を切ってくるものだから、もう少し飲める口かと思ったら想像以上にお酒が弱くて驚いた。よほど、私が飲めない人間だと踏んでいたのだろうか。非番だからよかったものの、勤務中だと怒られるやつじゃない、とため息をつく。最初の方は味の感想が聞けたから、私も参考になったけど……・。


「弥生は何してるんですか、こんなところで」


と、そのとき、入口の方を見遣ると両手を組んで苦笑する時景様がいた。


「時景様!」


驚く私をよそに時景様は厨房の中へと入ってきて、台に突っ伏す弥生に近づいた。


「ときかげさま……すみません……」


何だかしおらしく謝った弥生は、そのまますーぴーと寝息を立てて眠ってしまったようだった。「まったく」と呆れたように笑いながらも弥生の頭をひと撫でした後、今度は私の方を向いた時景様。そして、ぐいとその端麗な顔を近づけられ、私は思わずびくりとなる。


「こんなに酔わせて、弥生をどうするつもりだったのです?」


にこりと面白そうに笑う時景様だが、その誤解はやめてもらいたい。


「どうするつもりもなかったですよ……っ!新メニューの開発にと日本酒の飲み比べをしようと思ったら、どっちがお酒が強いかみたいな話になって」


すると、クスクスと笑いながら「弥生はお酒が強い方ではないのですがね」と言う時景様。それは私も今しがた、知った事実である。


「……まあ、弥生は弥生なりに、貴女と関わろうとしたのかもしれませんね。この前の小夜の一件について話したら、『あの人間がそんなことを』と驚いていましたから」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ