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「んで、この日本酒どうするつもりだ?」


台に並んだ酒瓶を手に取りながら、弥生がちらとこちらを見た。


「この日本酒を新メニューの開発に使おうと思って。ほら、神戸は灘の日本酒が有名だから」

「ふーん」


興味があるのかないのか、よく分からない返事をしながら厨房をぐるりと見渡す弥生。私は台に並ぶ銘柄をチェックしながら、ノートに商品名を書いた表を書き記していく。飲み比べたときの、味の違いを書き留めておいて、後で他の食材と合わせるときの参考にする予定だ。


「何に使うかはだいたい決めてるんだけど、酒蔵によっても味が違うから、まずはどのお酒がどんな味なのかを調べてみようと思って」

「調べてみるって……お前、今からこれ全部飲むのか?!」

「飲むと言っても味見するだけだから、ほんの少しよ?」

「つっても数も多いし、日本酒って度数高いだろ。マジで、こんなに飲めんのか?」


信じられない、という顔をしてそんなことを言うものだから「飲めるわよ」と、何だか変な対抗心が生まれてしまった。それは相手も同じだったようで、私が腰に手を当てて「そう言う弥生は度数の高い日本酒は苦手かしら」と煽ると、「言ってくれるな」とにこやかに笑う弥生。ちなみに、目は笑ってなかった。


「だったら飲み比べ勝負だ、コラ!」

「やってやろうじゃないの!」


それから、ぐぬぬぬと互いに顔を突き合わせる私たち。私、ザルなんだけど大丈夫かしら、この人……と思っていると、案の定──。

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