8
で、1時間後……。
「出会いが欲しい!どこかに良いご縁はないのか、あかね!」
案の定、酔っぱらった稚日女尊様は先ほどから私に絡み酒状態になっていた。
「い、良いご縁とは……?」
「わらわは機織りの神というところから縁結びの神様だなんて、もてはやされているじゃろう?じゃが、いつも周りの縁結びばっかりで、わらわにはいいご縁が全くないのじゃ……!」
「はあ」
そう言ってカウンターに突っ伏す稚日女尊様。
「最近は従者も私の相手そっちのけで、仕事ばかり……。誰もわらわに構ってくれぬ。思えばわらわは、素戔嗚尊に部屋に投げ込まれて打ちどころが悪く一度死んだ身……。きっとこの身は悪縁で結ばれておるのじゃ……!」
「部屋に投げ込まれて死ぬって、そんなことする神様いるんですか……」
「あの男は暴風の神!気性も荒くて無茶苦茶な男で、わらわはずっと苦手じゃったわ!」
そう言って、稚日女尊様はまたカウンターに突っ伏した。素戔嗚尊って結構有名な神様だけど、それは確かにひどいな。
「きっとわらわは、このまま一生ひとりで生きていかねばならんのだ……っ!」
「まあまあ」
うう、と泣きながら酒を煽る稚日女尊様にねぎらいの言葉をかける。それと同時に私が気になっていたのは、また飲みすぎで気分が悪くなってしまうのでは、ということ。もう何杯、グラスにお酒を注いだかわからない。これはそろそろストップをかけた方が……と思ったところで、タイミングよく「飲みすぎですよ」と声が聞こえてきた。




