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「そういえば、氷雨さんが食べたいって言っていたシュークリームありますよ」


その後、時景様や氷雨さんとしらたまたちの今後について、いろいろと話していた流れで、以前彼と約束した話を思い出した私は、冷蔵庫からシュークリームを取り出した。


その瞬間、ぱぁと目を輝かせる氷雨さんにいつもクールな彼の面影は見当たらない。「今いただいても?!」と前のめりに尋ねてくるので、若干引き気味になりながらも「どうぞ」と言えば、ぱくりと食べる氷雨さん。


目を閉じ、その味を噛みしめるように咀嚼する氷雨さんに、しばし緊張が走ったけれど、次の瞬間──。


「あ、あ、あ、あかね殿……!なんですか、この美味しい食べ物は!」


氷雨さんは感情が爆発したみたいに興奮気味に詰め寄ってくる。続けて「こんな美味しいものを作れるなんて、あかね殿は天才なのでは?!」と言って、さらにバクバク食べているので、もう何だか笑ってしまう。


「氷雨さんって、第一印象と違うってよく言われるタイプでしょう……」


呆れる私に、時景様からは「氷雨は食べることに関しては、貪欲ですからね」だなんてのほほんと返ってくる。うん、それは私も知っていました。


「……でもやっぱり、こうやって自分が作ったものを食べて喜んでもらうのは嬉しいですね」


しらたまたちとシュークリームの美味しさについて熱弁する氷雨さんを見つめながら私がそう言えば、時景様は「氷雨もいい顔をしています」と笑う。


「お客様にお出しする菓子の完成も楽しみにしていますね」


その言葉に、私はきゅっと顔を引き締める。そうだ。私の使命は、この縁の坊で提供するデザートを作ること。


とびきりおいしいスイーツを、絶対に作ってみせる。


改めてそう心に誓い、私は両手をギュッと握りしめた──。

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