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「しらたまたちを、縁の坊の従業員に……?」
それから2日後、厨房で製菓づくりに勤しんでいた私のもとに時景様と氷雨さんがやってきたかと思えば、そんな報告を受けることとなった。
「ええ、これからは屋敷の掃除やあかね殿のお手伝いなど、人手不足のところを中心にいろいろと手伝っていただければと思いまして。まあ従業員というよりは、気が向いたときにお手伝いする、程度のものですが」
氷雨さんがそう言うと、彼の背中からにょきと現れたしらたまたち。
「オテツダイスル」
「ナンデモマカセロ」
おのおのにそんなことを言いながら、しらたまたちは厨房のテーブルに並び、自分たちがどんなに有能かを語ってくれている。「食べるのが速い」って、それは仕事に関係あるんだろうか、という特技を主張している子もいた。まあ、かわいいからいいけど。
戦力になるか、わからないあやかしたちをよく時景様も受け入れたな、と思っていると、こちらをじっと見つめる時景様と目が合った。
「……小夜に、頼まれましたからね」
「小夜に?」
「ええ。このか弱いあやかしたちの面倒を頼む、と。……これもまた、この地と我々を結ぶ『ご縁』です」
そうね。まさに旅館の思いそのものだ。そう思うと「ご縁」って、すごく素敵な言葉に思えてきた。




