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「パティシエのとしての血が騒いだのか、地味な嫌がらせをしてくる貴女への対抗心なのか、その辺りは私もよく分かりませんが……」


と私が苦笑しながらそう続ければ、「何よ、それ!」とつっこみを入れてくる小夜。


けれど、「サヨ、タベロ」「コレ、オイシイ」と着物をぐいぐい引っ張るしらたまたちに、また小夜の視線がシュークリームへと戻る。


「サヨトタベタイ」

「イッショニタベラタモットオイシイ」


その言葉に目を見開いた小夜。それからしばらく、それをじっと見つめていた小夜だったが、そろりそろりと手を伸ばし、シュークリームをそっと持ち上げた。


眉間にしわを寄せて難しい顔で、それをしばらく見つめた後、シュークリームがゆっくりと口元へ近づいていく。直前で一瞬、彼女の手が止まったけれど、それからすぐ後、小夜はシュークリームを一口ぱくりと口にした。初めて食べる菓子の味を噛みしめているのか、俯いてしまった彼女の表情を捉えることはできなかった。けれど──。


「……何よ、美味しいじゃない」


聞こえてきた小さな声に、一番に反応を見せたのはしらたまたちだった。


「サヨ、モットアゲル!」

「イッショ二タベル!」

「ミンナデタベルノ、オイシイ!」


彼らはぷちシュークリームを手に取り、嬉しそうに小夜のもとへ集まると、口々にそう言って喜んでいた。小夜は驚いた表情を見せたものの、自分にシュークリームを差し出してくるしらたまたちを見て、困ったように笑っていた。しまいには私や美鶴にまでシュークリームを差し出してくる彼らに誘われ、私も小さなそれを一つ口にした。


「うん、確かにこれはとろけるような美味しさですね」

「私も初めて食べたときから、好きになっちゃいました~」


私と美鶴の感想に、しらたまたちも喜んでいた。すると、小夜がぽつりぽつりと語り出す。


「……私、お母様やお父様と元気になったら、いつかみんなでおいしいものをたくさん食べようねって約束してたの。シュークリームも、そのひとつだった」


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