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「……幽霊に生身の体を差し出すなんて、この人、何を考えているのかしら」


強い風が吹いたと同時に、あかねの体がだらりとなった後、顔をあげた彼女はいつもと違った顔つきで、私の顔を見つめそう言った。どうやら、小夜という少女があかねの体に憑依したらしい。


「……言っていたでしょう?貴女に、この小さなあやかしたちと共に自分の作ったシュークリームを食べてほしいと」


私の言葉に、少女はちゃぶ台の上に置いてあるシュークリームをじっと見つめていた。皿の周りには、いつの間にか白いもふもふとしたあやかしたちが集まっていて、小夜と呼ばれた少女が憑依したあかねのことを、つぶらな瞳で見上げている。


「そんなことをして私に恩を売って、この家から追い出すつもり?」


小夜はそういって、こちらをキッと睨みつけた。突然やってきた私たちに、警戒心を向きだしの眼差しを向けてくるのは無理もない話だろうと思う。実際、旅館の敷地内にある離れを管理する私としては、この場所が放っている邪気の原因が呪縛霊だと知り、ならば何とかして追い出さねばと思っていた。


「私がこのまま、この娘の体を乗っ取ったらあなたたちは困るでしょうね。一生このまま、ということもあるかもしれないのに、『ちょっとの間体を貸す』だなんて無謀なことをする人間ね」


あかねの姿でクスクスと笑う少女の霊。彼女らしくない笑い方にやはり違和感は拭えない。私は大きなため息をつき、小夜が憑依したあかねの体に一歩近づいた。


「無謀なことをする人間……そこは私も大いに同感します」


私の言葉に、怪訝な表情を浮かべる小夜。いや、顔はあかねのままなのだけれど、やはりいつもと違う表情に、中身はあかねではないのだと確かに分かる。


「けれど、それでも……この娘は貴女を思い、このような場を設けたのです」

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