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◇◇◇


「……ねえ、小夜。あなたって、どんな子どもだったの?」


その日の夜、仕事を終えて離れに戻ってきた私は、モコモコの部屋着に着替えた後、ちゃぶ台に頬杖を突いて天井を見つめながらそう尋ねた。姿は見えないし、今は風も吹いていない。返事もないし、声も聞こえないけれど、さっきからしらたまたちが「サヨ、ソコニイル」とあちこちを指さしながら教えてくれるので、きっと近くにいるのだろうと思って話を続けた。


「……私はね、おばあちゃんっ子だった。両親は厳しい人だったけど、おばあちゃんはいつも私を甘やかしてくれたから、おばあちゃんちに遊びに行くのがいつも楽しみだったわ。料理が上手で、お菓子づくりもよく一緒にした」


そう言えば、おばあちゃんも昔は有馬温泉によく入りに行ったと言っていたことを思い出す。温泉好きのおばあちゃんは、晩年も日本各地の温泉めぐりを楽しんでいたっけ。


「……私、おばあちゃんのことで、ひとつだけ後悔してることがあるの。パティシエになる夢を叶えた姿を見せてあげられなかった。誰よりも私の夢を応援してくれたのに、忙しさを理由におばあちゃんになかなか会いに行けなくて、でもその前に病気で倒れて。それで……」


別れは突然訪れた。いつでも会えると思って、会いに行かなかったことをそのとき、すごく後悔した。いま、生きている私にだって思い浮かぶ後悔がたくさんある。強い未練を残したまま死んでいった彼女にも、そんな後悔がきっとあるのだろう。


小夜は私の呼びかけに応えることはなかった。しんと静まり返った部屋で、1人佇む私をしらたまたちが心配そうに見つめていた。


「あかね、準備ができましたよ」


と、そこに時景様の声が聞こえ振り向くと、シュークリームを乗せたお盆を持つ美鶴さんを伴って、二人が部屋に入ってくるところだった。

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