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「……方法がないわけではありません。そもそも、本来成仏しなければいけない幽霊が住み着くということは、その場所に未練や執着があるからといわれています。その未練や執着から解き放ち、成仏させることができれば、あの離れから幽霊はいなくなるでしょう」

「未練や執着……要は呪縛霊ってことですか」

「そういうことです」


時景様の言葉に、私は「なるほど」と腕を組んで考えこんだ。


死ねば、あの世に行く。漠然とそう思っていたけれど、あまりに強い未練や執着があると、成仏できずにこの世に留まってしまう、か。


あの小夜という幽霊は、それほど強い未練がこの世にあったのだろうか。


と、そのとき時景様の執務室の机の上に飾られた椿の花が目に入る。凛と咲く一輪の花。見頃は少し前に終わったはずなのに、力強く、可憐に咲く椿の花。


「そういえば、椿って私どこかで……」


思い出すのは、桜色の着物を着た女の人。彼女は椿の花飾りを作っていた。病気がちな娘のため、家族ででかけるときにつけて行けるようにと。


そこまで考えたところで、私の体がぴたりと止まる。


「病気がちって……」


頭に浮かんできたその情景を皮切りに、以前見た夢の内容が次々と思い出されていく。そうだ、いつか見た夢に出てきた少女は、確か「小夜」と呼ばれていた。


裁縫をする母の背中。それを布団の中からじっと見つめていた少女。痛む胸。


そんな私を時景様と美鶴さんは首を傾げて見つめていた。ありありと思い浮かんだ情景に、もしかしてという考えが頭をよぎる。そういえば、彼女は食べたいものがあると言っていた。私は顔を上げると時景様に問いかけた。


「ちょっと、聞きたいことがあるんですけど」

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