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「幽霊を除霊してほしい?」
本館の方へと向かう途中、ちょうど時景様に出くわした私は先日から離れで起こっている出来事を事細かに伝えることにした。時景様の執務室的なところに連れられた私の隣には、同じく先ほど出会った美鶴さんもいる。
「あの離れ、しらたまっていうモフモフしたあやかしたちと、『小夜』っていう幽霊が住んでるみたいで。小夜のことは見えないんですけど、私にあの場所から出ていってほしいのか、風を吹かせて嫌がらせしてくるんです」
美鶴さんは私の訴えに、頬に手を当てながら心配そうにこちらを見つめている。一方の時景様は、机に肘をついて両手を組み、「幽霊、ですか」と小さく呟いた。
「……残念ながらその幽霊を除霊することはできません」
その言葉に目をぱちぱちさせて驚く私。
「できない……?」
時景様に言えば何とかなるだろうと踏んでいた私にとっては、予想外の返答だった。
「ええ、私たちあやかしと違って、幽霊は死者の存在。姿を目にすることもできませんから、そもそも彼らに関わることはできないのです」
単純に、あやかしも幽霊も「人ならざるもの」というくくりで見ていた私だけれど、そこにはいろいろと違いがあるらしい。とはいえ、そうなると今後、あの場所で生活する私としては困る。
「じゃあ、あの離れから幽霊を追い出すことはできないんですか」
どうしたものかと思って尋ねてみると、時景様は組んでいた手を解いて私を見た。




