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振り返った白モフモフは、丸いつぶらな瞳をしていた。その下にカスタードクリームがついているところを見るに、どうやら口もあるらしい。私の姿を捉えた彼らは、目をパチパチとさせた後、「ギャー!!」と言わんばかりに一目散に逃げようとする。
「あ、コラ!ちょっと待ちなさい!」
慌てた私は一番近くにあるモフモフを両手で捕まえた。
「捕まえたわよ……!」
両手で握りしめたモフモフは、ガタガタと体を震わせ瞳をうるうるとさせながら私のことを見つめていた。私はこの子を握りしめたまま、どこかに隠れてしまったモフモフたちに呼びかけた。
「おとなしく出てきなさい。アンタたちの仲間が、どうなってもいいのかしら」
我ながら悪人のような台詞だなと思いつつ、辺りをじっと見渡す。すると、あちこちからモフモフたちがそろりそろりと現れる。彼らは綺麗に整列すると、みんなして瞳をうるうるとさせながら、私のことをじっと見上げていた。
「かわいい顔してもダメよ。勝手に人のものを食べた上に、廊下まで汚したんだから」
モフモフたちは互いに顔を見合わせた後、恐る恐るといった感じで「ワルカッタ」「ゴメンナサイ」と口々に謝罪の言葉を述べた。案外、素直な謎のモフモフたちに私は頬を緩ませ、しゃがみこんで彼らと視線を合わせた。片手には、まだ人質を捕まえたままだけど。
「あなたたちは誰なの?どうしてこんなことを?」
私の質問に「コノイエ、マモッテル」「アヤカシ」「アマイモノスキ」と、分かりやすい言葉が返ってきた。
「なるほど、家守りのあやかしってことね……。名前は?」
「シラタマ」
白玉……確かに白い玉みたいな姿だけども。
「甘いものが好きなのは分かったけど、人のものを勝手に取るのはダメよ。食べる前に、きちんと相手の許可を取ること。いいわね?」
「ワカッタ」
「モウシナイ」
「ダイフクモタベタ」
と思いがけず、大福を食べた犯人まで見つかった。
「犯人はあなたたちだったのね……」
素直なモフモフたちに、私もこれ以上とやかく言う気は失せてしまった。時景様、疑ってごめんなさいと心の中で謝っておく。
それにしても、あやかしにはあやかし特有の気配を感じるものだけれど、この子たちからはそれを一切感じない。
どうしてだろう……。
と、考えていると、ふわりと一瞬強い風が吹き、目をつむる。その瞬間に聞こえてきた「早く出て行って」と言う女の子の声。風が収まってから目をそっと開けると、しらたまたちは「サヨダ!」とあたふたし始めた。




