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「では、次はあかね殿が使う厨房を案内しましょう」


気持ちを切り替え、氷雨さんの後に続いて隣の厨房へ向かう。扉を開けると、料理用の厨房と変わらず、一通りの設備が整った厨房が飛び込んできた。あちらの部屋よりは随分とこじんまりとはしているけれど、製菓だけなら十分だ。


「あちらの厨房には鬼火で温める釜や私の術がかけられた冷凍庫などもあるのですが、こちらは人間が使う設備を揃えていますので」

「雪男のあやかしって、そんなこともできるんですね」


私が感心したようにそう返すと、右手を出しながら得意げに「中庭の池を一瞬で凍らせることもできますよ」と答える氷雨さん。その瞬間、小さくキラキラとした氷の粒が彼の周りに現れた。私の体もぶるりと震えて、両手で体を抱きしめる。「おっと失礼」と、すぐに氷を引っ込めてくれたので氷漬けにはならなかったけれども。


「このように、あやかしはそれぞれの特性を持っているので、その特性を仕事に活かしたりもしています」

「へえ」


そんな力があるとは驚いた。


「ちなみに食材や調味料は事前にお伺いしていたものは、こちらで用意させていただきました。足りないものは買い出しに行ってもらえたら」

「ありがとうございます」


何から何までお世話になり、氷雨さんには感謝しかない。と思ったところで「あ」と声をあげ、私は氷雨さんに向き直った。

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