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「時景様、あかねもスイーツなくなっちゃいますよー!」
と、そのとき、酒瓶を持った弥生がニコニコと笑いながらこちらに手をブンブンと振ってきた。その隣では、氷雨さんが「弥生、今いいところなのに邪魔しちゃだめでしょう!」と酔っ払いを諌めている。さらに美鶴さんに「空気を読みなさいよ」と、みぞおちを肘で小突かれ、うっとお腹を抱える弥生。わらわらと集まってきた、しらたまたちは不思議そうな顔をして、弥生の体をツンツンしていた。
「弥生君、お酒飲むとすぐ酔っちゃうのによく飲むよな」
「毎度のことだけど、誰だ、弥生に酒飲ませたのは」
地面にうずくまる弥生を、源さんや貫太さんも呆れ顔で見つめている。その横で、「誰だろうな」と笑いながら、誰かさんと同じく酒瓶を手にし、頬を赤く染めるとめ吉さんがいるので犯人は言わずもがな、だけれども。
「では、私たちも行きましょうか」
その言葉に隣を見ると、にこりと微笑む時景様。勝利を祝うパーティーはまだ始まったばかり。思う存分楽しまなくちゃ。私も「はいっ!」と笑顔を返し、みんなが集まる輪の中へ。
「時景様は何を食べますか?」
取り皿を手にそう尋ねれば、時景様はテーブルの片隅にあるスコーンを指指して、「私はこれを」とお気に入りのスイーツを所望した。
「あかねのスコーンは、私の“特別”ですから」
甘やかな瞳で見つめられ、そう微笑んだ時景様。「特別」という一言が、まるで魔法みたいに私の心を包み込み、胸いっぱいに嬉しさが広がった。
その後、私たちが出会ったきっかけとなったその菓子が、縁の坊の看板土産となるのはまた別の話。
こうして色とりどりの花が咲く春の庭園で開かれた宴は、縁の坊のみんなとの絆を一層深める、何より温かい一日となったのだった。




