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そう言われて時景様の視線の先を見てみると、縁の坊の従業員たちが賑やかに、楽しそうにスイーツを食べているところだった。


取り皿に全種類のスイーツを取り、ものすごい勢いで食べている氷雨さん。

そんな氷雨さんの肩に腕を回して、苺のタルトを横からつまみ食いして怒られている弥生。

そんな氷雨さんと弥生をキラキラとした瞳で見つめながら、抹茶のムースを食べている美鶴さん。

中のクリームの味が異なるプチシュークリームを取り合っている、しらたまたち。

料理人の血が騒ぐのか、サブレやフィナンシェなど数種類の焼き菓子を食べ比べながら、何やら熱心に議論している源さん、貫太さんにとめ吉さん。

普段はあまり接点のない、ほかのあやかしたちも、みんな笑顔で楽しそうに私が作ったスイーツを食べてくれている。


『美味しいスイーツを作って、たくさんの人に喜んでもらいたい』


幼かった私が、あの日夢見た景色が、今目の前にある。そう思った瞬間、込み上げてくる想いに、私はとっさに時景様から背を向けた。震える手を握りしめ、ぐっと歯を食いしばる。


「あかね、こちらを向きなさい」


その優しい声色に、いよいよ胸が苦しくなった。


「だめ、今ちょっと……っ、見ないでくださ──」


その瞬間、ぐいと手を引かれ体のバランスを崩した私は、気づけば時景様の胸にぽすんと顔を埋めていた。それから、ゆっくりと顔を上げると、美しい翡翠色の瞳がすぐ近くにある。


やめて、そんな優しい目で私を見ないで。そう思うのに、私の視線を捕えて離さないように、時景様がまっすぐに見つめてくる。


「……目を逸らさず、前を向いて。この光景を、貴女の目に焼き付けておきなさい」


そう言った時景様の指が私の目尻に触れ、零れ落ちる涙を拭ってくれた。


「貴女が夢を諦めず、掴み取った景色ですよ」


時景様はそう言うと、私の肩を抱いて前を見た。言われた通り私も前を向けば、みんなの笑顔。ひとりひとりの表情を噛みしめるように見つめながら、私はきっと、この景色を一生忘れないだろうと思った。


挫折を重ね、遠回りをし、やっとの思いでたどり着いた場所。眩しいぐらいに美しいその景色は、きっと今後の私を何度も励ましてくれることになるだろう。


雲一つない晴れやかな青空の下、私はこの地が引き寄せてくれたたくさんの「ご縁」に、心から感謝した。

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