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「今日はお疲れ様でした」


そう言って、にこりと優しく微笑む時景様に私は「時景様こそ、お疲れ様でした」と返す。スイーツが並ぶテーブルからは少し離れたところにいるせいか、みんなが歓談する声が遠くに聞こえる。


芍薬や牡丹が咲く美しい庭園を背に佇む時景様。初めて彼と出会ったときは、桜の花が咲いていた。はらはらと散る桜の木の下に佇んでいた、金狐のあやかし。時景様との出会いが、私の人生を変えてくれた。


「本当にありがとうございました。……私を信じて、託してくれて」


あの日の出会いがなければ、私は今も落ちこぼれの自分を嫌いなままで、何をやってもダメな自分のままでいたかもしれない。


「……私は何もしていません。貴女が諦めず、努力したから得られた結果です」


ふと微笑み、そう言いながら時景様がまた一歩、私に近づいた。美しい翡翠色の瞳。その瞳はいつも優しげに、私を見守ってくれていた。


「そんなこと、ありません。時景様があの日、私に言ってくれたから、私は諦めずにこの場所に立てたんです」


もうダメだとくじけそうになった時も、いつもあの言葉に励まされた。


『……できるか、できないかは、やってみないと分からないでしょう?』

『一度や二度駄目だったからといって、自分には才能がないなんて思わなくていいじゃないですか。三度目、四度目の挑戦で、できることだってあります。諦めたくない夢があるのなら、叶えられるまで続けてみればいいじゃないですか』


風に揺られ、さらさらと靡く時景様の金色の髪。朝日に照らされたその髪は、きらきらと輝いてとても綺麗だったことを、今もありありと思い出せる。


「……それに何より、私が作ったスコーンを美味しいと言って喜んでくれた。私、あの時、時景様が喜んでくれた顔が忘れられなくて」


私がそう言って笑いかければ、時景様は目を大きく見開いた後、ふと頬を緩めた。そして、私の肩をぐいと掴むと、ぐるりと反転させられる体。


「い、いきなり何です──」

「だったら、この光景を見ておきなさい」

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