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「……確かに最初は、うちの料理をよう知りもせん人の子に任すやなんて、時景様も何を考えとんやと思った。けど、一人菓子用の厨房にこもって一生懸命に試作をしとうアンタの後ろ姿を見て、こんなあやかしまみれの中でようやるわとも感心しとったんやで。煮詰まっとったんか、頭をわしゃわしゃやるもんやから、髪もボサボサで山姥みたいになっとったわ」
とめ吉さんはその光景を思い出したのか、ククッとお腹を抱えて笑っている。な、なんだか恥ずかしい……。そんな場面を見られていたなんて、私はちっとも気づかなかった。
「言っとくけど、俺の指導は厳しいで?」
とめ吉さんはそう言って、私に手を差し出した。初対面では私を突っぱねていた彼が、こうしてニッと笑いながら手を差し出してくれることを、あの頃の私は想像できただろうか。
「望むところです!」
私もにっと笑顔を返し、差し出された手を取ってそう宣言すれば「しごきがいがありそうや」だなんて笑われる。
「あかね」
そのとき、後ろから名を呼ばれ振り返れば、腕組みをしてこちらを見つめる時景様がいた。
白の着物に水色の羽織姿。出会ったあの日と同じ着物を着た彼に、胸がどくりと音を立てた。「じゃあ、俺はこれで」となぜかニヤニヤしながら立ち去っていったとめ吉さんにお礼を述べると、時景様がゆっくりこちらへ近づいてくる。




