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「よろしくお願いします」
すべてのプレートが完成し、いよいよ実食の時間。
お客様に好きなデザートを選んでもらうというスタイルには手応えを感じたけれど、何より大事なのはスイーツが美味しいこと。いざ、自分の作ったものを食べてもらうとなると、また胸がドキドキとうるさく鳴り、緊張が走る。それは隣にいる源さんや貫太さんも同じだったようで、両サイドからも言いようのない緊張が伝わってきた。
「では、どうぞお召し上がりください」
氷雨さんの言葉を合図に、それぞれがスイーツを口に運ぶ。八雲様は日本酒のチーズケーキを、蒼真様はビターチョコレート、熾音様は柚クリーム入りのシュークリーム。しばし続いた沈黙に、私は手のひらをギュッと握りしめた。
それからどれだけの時間が経ったのか分からない。3人は一度顔を見合わせた後、無言のまま他のスイーツに手を伸ばし、また食べるの繰り返し。何か言葉にされるのも怖いけれど、無言で食べ続けられるのも、それはそれで怖かった。そして──。
「……藤宮あかね。何か言い残したことはあるか」
選んでもらった3品以外のすべてのスイーツも一通り食べた八雲様は、目の前で正座する私にそう問いかけた。向けられた厳しい表情に、どくりと音を立てる胸。
その瞬間、だめだったのかも、という弱気な自分が顔を出す。けれど、それでも、まだ諦めきれなかった私は震えそうになる手を強く握りしめ、とっさに「あ、あります!」とそう返した。
「お出しするスイーツの中でもお客様が選べるのは3品まで!ほかに食べたいスイーツがある場合や、季節によって内容が変わることを謳えばリピーターの獲得にも繋がります!あ、あと、今回ご紹介した好きなスイーツを選んでもらうスタイルを応用して、例えばお昼時やお茶の時間帯などに『デザートビュッフェ』や『アフタヌーンティーセット』と題してメニューに組み込めば、日帰り客を呼び込む材料にもなりえるかと!それから、そちらにあるサブレやフィナンシェなどの焼き菓子は日持ちしますので、旅のお土産として館内の売店で販売してみてはいかがでしょう?!売上にも繋がりますし、洋菓子の土産ものは幽世でも珍しいかと思いますので、旅館の良い噂が広がるかもしれません……!」
早口で、まくしたてるようにそう言った後、私はぜぇはぁと息を乱しながら、3柱の神々を見つめた。後悔したくない。そう思って、最後まで諦めたくないと私も必死だったのだ。
すると、ぷっと噴き出す八雲様。それを皮切りに、蒼真様、熾音様も笑いだす。




