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それから幹部の皆さま方は館内の視察をひと通り終えた後、試食会の会場である広間へとやってきた。


頭上には華やかな天井画。鶴が描かれた襖に囲まれた広間の中央には重厚感のある机が一卓と、座布団が3つ並べられている。それぞれが座布団に腰を下ろすと、時景様、氷雨さん、とめ吉さん、美鶴さんも側に並んで座る。


「では、これより来月より縁の坊で提供を予定している菓子の試食会を行います」


氷雨さんの言葉とともに、私はその場から立ち上がった。緊張感のある空気を肌で感じ、心臓はバクバクとうるさく鳴っている。けれど、その緊張を悟らぬよう姿勢をぴんと伸ばし、まっすぐに前を見据えた。


「お初にお目にかかります、藤宮あかねと申します。この度は、大変貴重な機会を設けていただき、ありがとうございます」


彼らの前に腰を下ろした私は、できるだけ丁寧に、ゆっくりとを心がけて最初の挨拶をした。その間中も遠慮のない視線が突き刺さるものだから、気が抜けない。


「今回、私は神戸の特産であるスイーツを縁の坊のお客様に喜んでもらうため、どうすればいいかを念頭にメニュー開発を行いました。有馬や神戸産の素材を使い、季節感を感じられるもの。たとえ好みが異なるお客様でも、ご満足いただけるもの。また、ここへ来たいと思ってもらえる……そんなスイーツを目指して作りました」


私の言葉に「ほお」と八雲様がおもしろそうに笑う。


「先日の試食会で思うような結果を出せなかったお前が、たった2週間でそんな菓子を作れるようになったと」


その声色からは「そんなことはとても無理だろう」という声が聞こえるような気がした。けれど、私は「はい」と自信を持ってそう答えた。その瞬間、八雲様の頬がぴくりと動いた、気がする。

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