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代表作 エッセイ

読者さんの頭に浮かべるものの順序を考えよう

 私は小説を書く時、基本的にはなんにも考えないほうがうまく行きます。

 頭でウーンと考えながら書くと、どうにもゴチャゴチャした読みにくいものになってしまいがちなようです。


 サラサラと指が動くのに任せて書くと、あとから自分で読んでも「わ、脳みそまったく使わなくていいから読みやすい!」みたいなのが書けます。

 ただ、その際でも、天才だからそういうことができるというわけではありません。天才なら頭でウーンと考えたらさらにいいものが書けるはずです。


 昔から漫画と詩はずっと書いていました。

 小説も、読むのは好きで、よく読んでいました。


 その中で自然に身についたというか、漫画や詩を描く時にも意識してやっていたことがあります。




 たとえば次のような内容を描きたいとします。



『赤い薔薇を見て私はその色が血のようだと感じ、殺人衝動に駆られた』



 このまんまだと面白さがないです。


 では次のようにしたらどうでしょう?



『私の前に赤い薔薇がある。私はその色が血のように見えた。突然、殺人衝動に駆られ、私は群衆の中へ駆け出した』



 なんか小説っぽくなりました。


 でもなんかまだ面白さが足りない……。


 見せ方が単に説明的なんです。ダイナミックさが足りない。


 これをダイナミックにするには?


 演出です。


 で、私なら次のように書きます。



『花壇から突き立っているその花は、薔薇だった。私の目の中に赤が広がる。私の中にある赤い血と同化する。太陽の色が反転し、黒くなる。持っていたナイフを握りしめると、私は踵を返し、駅前を歩く人混みの中へ駆け出した』



 なんかダイナミックになったと思ってます(自分では)。



 小説でも漫画でも詩でも、大事なのは読者さんに『何を、どういう順番で見せるか』だと思っています。

 それが作品を面白くする演出の妙かな、と。

 上の例では『花壇』→『薔薇』→『赤』→『血』→『殺人衝動』→『人混み』の順番で、『殺人衝動』は直接描かずに隠してみました。あ、なんとなく太陽さんにも出てきてもらいました。

 小さな景色から大きな景色のほうへと読者さんのイメージを持っていく感じで。

 逆にしても面白いと思います。

 とにかく読者さんの頭の中にぽん、ぽんとイメージを順番に置いていく感じで書くことを意識していると、面白いものが書けるように私は思っています。


 ここでぜひツッコんでください。

 一番最初に書いた例でも順番は同じですよね?

『花壇の赤い薔薇を見て私はその色が血のようだと感じ、殺人衝動に駆られ、群衆の中へ駆け出した』とすれば、順番は全くおんなじです。『花壇』→『薔薇』→『赤』→『血』→『殺人衝動』→『人混み』の順番です。

 こんなふうに私は自分でも何を言ってるのかわからなくなるバカなのですが、少なくともこの例文だとアレです。

 見せる順番は同じだけど、見せ方がのぺーっとしてるんです。

 もっとぽん、ぽん、ぽんと、ひとつずつ順番に見せるべき!


 そんなふうに──


 私は頭で考えるとすぐに破綻してしまうバカなのですが、こんな私でも小説は描けるのです。


 頭の中でミュージックビデオを作るように、出すものの効果的な順番を考えるのだ!


 よし、書くぞ!(これから仕事に出かけます……)


 





 

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― 新着の感想 ―
勉強になりました。自分はイメージではなく言語で考えていることに気づきました。状況を言語に分解して組み換え、情景を再構成しています。 この方法でも見せ方の順序はある程度考えられますが、ここから先のジャ…
長文感想です! このエッセイの感想は、「ここみ様は多分、視野が広すぎる。」でした。 考えないで書くのは、箇条書きしか出来なくなった者です。 どちらかと言うと「意識して考えないと、納得いく小説が…
ためになるお話、ありがとうございます<m(__)m> お仕事気を付けて(と、もう終わってらっしゃる??)
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