第8話 僕はキノコですか? いいえ、妖狐です!
キノッピーによるQ&A回です。
「そう言えば、僕の種族って妖狐っていうんだっけ? なんでキノコじゃないの?」
美咲とショッピングに行った翌日、僕はキノッピーを呼び出して説明責任を追及していた。
「当然だな。ワシらキノコ――狂乱茸王は最も高貴な種族だからな。それに……眷属を同じ種族にするわけにはいくまい」
なるほど、キノッピーが魔王であることを考えると、キノコは王族と言うことになるからな……。言っていることはわかるのだが、それが納得につながらないことに
、もどかしさを覚える。しかし、現実にはキノッピーは魔王、魔族の王である。僕は仕方なく湧き出す疑問の大半を飲み込んだ。
「そうは言っても、種族が妖狐の割には使える魔法がキノコ関連だけなのはどういうことなのさ」
「それは仕方ないだろう? ワシは妖狐がどういう力を持っているか知らんからな! だから、葵が使えるのはキノコ系魔法だけだ!」
「何というか……適当なんだね」
「そんな目でこっちを見るな! ワシだって魔王である以上、部下の能力を把握するのは大事だと思ってたんだ。だがな……『わっちの力? いい女って言うんは、秘密が多いほど魅力的になるんどすえ』とか言って、全然教えてくれんかったのだ!」
「部下に良いように言いくるめられる上司かよ……魔王の威厳が欠片も無いな……」
「そんな可哀そうなものを見るような目で見るな! 妖術はさっぱりだったが、狐だし獣人みたなものだろうと言うことで、獣人並みの身体能力は付けてあげたのだぞ。それに妖狐の術ではないが、キノコ系魔法はワシの世界の魔法の中でも最強なのだぞ!」
「そうなの? 他にはどんな魔法があるの?」
「火、水、風、土、光、闇、妖、幻、竜だな。これにワシの茸を合わせて10系統の魔法がある。人間が使えるのは光までだな。魔族は光が使えずに闇が使える。妖から後は種族特化で、妖は妖狐などの妖怪系、幻はキマイラなどの幻獣系、竜はドラゴン、そして茸がワシらだ」
ファンタジーでお馴染みの種族が並ぶ中に、唐突に現れるキノコに違和感が半端なかった。
「というか、ドラゴンがいるのにキノコが魔王なの?」
「キノコをバカにしているのか!? ワシらはドラゴンをも凌駕する種族だぞ」
「いやいや、バカになんかしてないけどキノッピー最初に炎でめちゃくちゃビビってたじゃない。炎の息とかで、すぐにやられちゃうんじゃないの?」
「先手を取られればの話だ。ワシらは自分の領域から外に出ることがあまりないからな。キノコに覆われたワシらの領域なら負けることはない」
「そうなの?」
どう考えてもキノコごと焼き尽くされる場面しか想像できなかった。
「失礼なことを考えているようだが……。ワシらの領域に入った瞬間に麻痺胞子によって何もできなくなるからな。あとは眷属たちに任せてもいいし、毒茸胞子や吸命胞子を使ってもいい。抵抗力の高いドラゴンにも効果がある上に、生命力が高い相手の方が効果が高いからな」
キノコ系魔法の攻撃は一部が割合ダメージになっているようで、強い相手であればあるほど効果が上がるらしい。僕の予想以上に強力な魔法だったことに、流石は魔王の種族魔法だと感心する。
「い、意外と凄いんだね。キノッピーは……あれ? でも、最初に戦えないって言ってたような……」
「当然だ。あの時は完全なアウェーだったのだからな。ワシが力を発揮するにはキノコで満たされた領域が必要なのだ」
「でも、それなら胞子領域を使えばいいんじゃないの?」
「ワシは胞子領域は使えん。それに、普通に作るなら数年はかかるからな。それに胞子領域は一時的なものだからな。地道に地下深くから少しずつ領域を広げていくしかないのだよ」
「でも、僕は普通に胞子領域を使えるけど……」
「そうだ、眷属であれば問題なく使うことができる。だから、ワシはお前を眷属としたのだ」
詳しく話を聞くと、キノッピーの種族は魔王と言いながら、個の能力の高さで戦うよりも、多数の眷属を使って戦うスタイルのようで、向こうの世界ではキノッピーもたくさんの眷属がいたらしい。
「そう言えば……。キノッピーって、どんな眷属がいたの?」
「魔族の種族としてはお前と同じ妖狐族、人狼族、吸血鬼族、妖精族、幻獣族、淫魔族、竜人族、鬼人族だな。お前のように元人間だった者もいるぞ」
「へぇ……、いろんなのがいるんだね」
「これらは直属の眷属だが、その下にはもっとたくさんの魔物がいるがな。直属の眷属は全員が魔法少女だ」
「……それって僕みたいな幼女ってこと? やっぱりロリコ――」
「そんな訳なかろうが。カミラ――吸血鬼族の眷属は人間で言えば15歳くらいでDカップだし、ミレイア――淫魔族の眷属は12歳くらいだがHカップだ」
「結局、ロリコンじゃないか!」
「全員がお前みたいな貧乳だと思うな、ってことだ」
確かに今の僕は推定Aカップで、彼女たちには到底かなわないだろう。男だったら『貧乳はステータスだ』とか言うこともあるのだろうが、女になったことで価値観が変わってしまったようで、平均より小さいと気になってしまうのは仕方ないことだろう。
「というか、異世界の魔王であるキノッピーは何でこっちにやってきたの?」
「お前が言うな!」
「えっ?!」
「ワシがやってきたんじゃない。お前が呼び出したのだろうが!」
「僕が呼び出した?」
「そうだ、お前の異能力というやつだろうが。まったく迷惑な話だ」
どうやらキノッピーが言うには、僕は『異世界召喚』という異能力を持っているとのことだった。それは、危機的状況に陥って、どうしようもなくなった時にだけ使うことが可能で、異世界から何かを召喚することができるらしい。
これまで危機的状況に陥って、どうしようもなくなったことが無かったので、使えなかったのだろうということだった。
「これからもピンチになれば召喚できるのかな?」
「理屈だとできるはずだが、たぶん無理だろうな」
「何でだよっ!」
「危機的状況に陥ることはあるかもしれん。しかし、どうしようもなくなることは無いだろうからな。ワシの力をもって、そのような事態など起こり得んよ」
キノッピーはドヤ顔で語った。もし、条件に「どうしようもなくなった」というのがあるのなら、魔法少女となった僕が異能力を使う機会はかなり少なくなるだろう。
「キノッピーを送り返したら召喚できるようになるかも」
「何を言っているのだ、バカ者! ワシのような強力な存在を都合よく召喚できるわけがなかろう。こう見えてもワシはSSRキャラだぞ! 排出率0.7%の★5キャラだぞ!」
「やけに数字が生々しいんだけど……」
この魔王、この世界のサブカルチャーにやたらと詳しいのは何故だろう。そう、僕は不思議に思っていた。この時、僕はキノッピーに詰め寄らなかったことを後で後悔することになる……。
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