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第3話 これは幼女ですか? いいえ、男子高校生でした!

「えっと……、先ほどはありがとうございます」


僕は死霊姫に向かって先ほどのお礼をする。すると、彼女はニッコリと微笑んでかぶりを振った。


「ふふふ、いいえ、お気になさらず。アイツには私も恨みがありますので……。あ、自己紹介がまだでしたわね。私、黒羽綾香くろはねあやかと申します」

「あ、僕は相沢葵です」

「葵ちゃんね。第七の新入生かな?」

「いえ……。高等部2年です。こう見えて16歳です」


僕が高等部2年ということを聞いた綾香さんは目を丸くして驚いていた。何しろ、見た目だけは10歳前後なのだから無理もないだろう。


「あ、ええと。異能力、というか異能力で召喚したヤツと契約したら、この姿になっちゃったんですよ」

「あ、ああ、なるほど。だからぶかぶかの男子の制服を着ているのね」


どうやら彼女には納得してもらえたようだ。


「それじゃあ、まずは私の話からね。名前はさっき言ったからいいわね。所属は第四学園よ。私には姉さんがいて第二学園の生徒だったの。でも、去年のクリスマスの日に炎王――楠木大輔くすのきだいすけに襲われて殺されたのよ」

「それって、普通に大事件なんじゃ?」

「そうね。でも、アイツは罪に問われなかった。姉がこれを持っていたから」


そう言って、綾香さんは小さい宝石を取り出した。


「これは?」

「これは秘石と言って、願いを叶える賢者の石の欠片と言われているわ。異能力者の中では知る人ぞ知るって感じだけど、これを持っている人間は襲われて殺されても相手を罪に問えないのよ」

「そんな!」

「ま、襲われて返り討ちにするときに殺しても罪には問われないから、お互い様ではあるんだけどね。それに、これを持っている人間は優秀な異能を持っているから、滅多にやられることは無いのだけどね」

「だからと言って……」

「言いたいことはわかるわ。そういう決まりだったとしても許せないことには変わらない。私がそうであるようにね……」


そう言って、両手を握り締めて唇を噛む。それほどまでにお姉さんが襲われたことが悔しくて仕方ないのだろう。


「でも、なんで綾香さんがそれを?」

「姉さんが殺される前に、私に託してくれたのよ。これがあれば、同じ秘石を持っている人間がどこにいるか、およそだけど分かるようになるの」

「でも、持っているのはアイツだけじゃないんでしょ? それだとアイツだと分からないんじゃないかな?」

「持っている人間が分かっていて、その人間に集中することで他の人間は対象外にできるのよ。それに……そうすれば、場所もかなり正確に特定できるわ。私はずっと復讐のためにアイツに集中しているからアイツの居場所を特定するのは容易いわ。もっとも、そのおかげで他の秘石を持っている異能力者は分からないんだけどね」


彼女がピンポイントで僕の学校に来れたのも、それが理由だと分かった。


「ともかく、助けていただきありがとうございました。お礼は後ほどさせていただきます」

「ああ、さっきのは別にいいわ。私の目的でもあったわけだし。ただ……。もし可能なら私の復讐を手伝ってくれないかしら。さっきの戦いぶりをからして、アイツとも互角に渡り合っていたし、手伝ってくれると嬉しいんだけど……」

「でも、僕はFランクですよ……」

「ランクなんて関係ないわ。ランクが高くても復讐の役に立たないのなら、私にとっては無意味だからね。でも、ランクが低かったとしても葵ちゃんみたいなタイプは大歓迎よ。それに……」


綾香さんが僕をべた褒めするので思わず照れてしまうが、綾香さんの方も少し顔を赤くして何かを呟いていた。


「わかりました。僕にとってもアイツは学校を襲ってきた因縁のある相手です。Fランクの僕ですけど、綾香さんの力になれるのであれば協力します」

「ありがとう!」


僕が協力したいという旨を伝えると、花が咲いたような笑顔を浮かべた。少し内気そうな雰囲気と黒を基調としたドレスの陰気な印象とは対照的な明るい笑顔のギャップに、僕は女の子同士だということも忘れて赤面してしまった。


「うふふ、それじゃあ。また後で連絡するわ。今後ともよろしくね、葵ちゃん」

「あっ……」


僕が何かを言う前に手を振りながら、綾香さんは教室から出て行ってしまった。


「僕も戻るか……」


ずっとここに居ても仕方ないので、僕もぶかぶかの制服を着たまま校舎の外に出る。外では心配そうな表情で美咲が校舎の方を見つめていた。


「あ、葵?! 無事だったのね! よかったぁ!」


彼女は駆け足で僕の前にやってくると安心した様子で抱きしめてきた。


「ちょっと、美咲!? ……って、何で僕だってわかるんだよ!」

「だって、どこからどう見ても葵じゃない。……あっ!」


美咲は少し気まずそうな表情を浮かべたが、すぐに笑顔になった。


「そんなの分かるに決まってるじゃない。何年一緒にいるのよ」

「いや、結構無理があると思うけど……」


確かに僕は葵だし、幼女になったとはいえ面影は残っている。なので気付いても不思議ではない。しかし、外見の年齢も性別も違う僕を一目で見分けたことに違和感を感じた。


「あ、もしかしたら……。私の異能力かもしれないわ」

「どういうこと?」

「どんな姿になっても葵だってわかる異能力よ」


違和感の原因は彼女の異能力だという説明に関しては理解できた。納得はできなかったけど……。そもそも僕限定の異能力って何だよ、って問いただしたかったが、実際特定個人に限定した異能力を持っている人間もいないわけではないが……。


「むむぅ、ちょっと納得できないけど。そういうタイプの異能力が無いわけじゃないからなぁ……」

「そうよ。だから私の異能力も測定不能だったのよ」


僕と同様に彼女の異能力も測定不能だった。それで第七学園に入ることになったのだけど……。


「それって、僕の姿が変わらないと異能力がわからないってことだよね」

「そうね。でも、世の中の異能なしって言われている人の中にはそういう人もいるってことよ」


異能力は誰にでもあると言われているが、ごく一部の人間は異能力が測定不能――異能なしと判断されたままの人も少なくない。確認する条件の難易度が高いというのは妥当な理由に思えた。


「それはそうと……。そんな恰好でいつまでいるつもり? 着替えは用意してあるから、私の家に行くわよ!」


考え込んでいた隙を突かれた僕は、美咲の勢いに押されて彼女の家に行くことになってしまった。もっとも、僕は一人っ子なので自分の家に帰ったところで着替えられるようなものは何もないので、彼女の提案はありがたいのではあるが……。


「って、こんな格好で電車に乗るの?!」

「仕方ないでしょ。大丈夫、家に着くまでは私が守ってあげるから!」


そう言って、イケメンスマイルにして親指を立てた。別に惚れるなんてことはないんだけどね。

この作品を読んでいただきありがとうございます。

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