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Fランク学園のSランク能力者~最底辺と呼ばれた異能力者は魔法少女となって理不尽な世界に立ち向かう~  作者: ケロ王


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14/14

第14話 これは愛撫ですか? いいえ、ただのスキンシップです!

「うわぁ、ひろぉい!」

「いい部屋ね」


 温泉宿についた僕たちはさっそく部屋に通される。部屋は意外と広く僕と美咲が大の字になって寝転がっても全然余裕があるくらいだ。


「宿のお風呂は朝の10時から12時以外ならいつでも入れるみたいだね」

「夕食は18時から20時の間でお願いしますだって。朝食は6時から8時みたい」

「うーん、まだまだ夕食まで時間があるなぁ」

「せっかくだし、外の温泉にでも行ってみよっか」

「そうね。それじゃあ、準備して出ましょ」

「あれ? そう言えば、美咲……お姉ちゃんの両親は?」

「ああ、別の宿よ。明後日の帰りに駅で待ち合わせてる」

「……」


 ここに来た意味は一体……。と思わなくもないけど、僕の目的は温泉でのパワーアップだったので、気にしないことにした。


「まあ、行こうか。キノッピー、温泉なら何でもいいの?」

「効果に差はあるが、温泉ならどれでも効果は多少なりとも出るはずだぞ」

「効果が高いのは、どうやって調べればいいの?」

「効能が美肌とか、安産とかは効果が高いぞ。あとは豊胸とかもな」

「えっ、豊胸?! なにそれ」


 その言葉に思わず反応してしまった僕は、美咲の胸と自分の胸を見比べてしまう。その差は歴然であった。しかし、温泉に入るだけで差が埋められるなら楽なものだろう。しかし、世の中そんなに都合よくはいかないものである。


「キノッピー、美肌はあるけど、安産とか豊胸とか書いてあるところが全然ないんだけど!」

「もしかして、葵……。さっきまで別のところにしようって言ってたのって、それが理由なの?!」

「うっ……。い、いいじゃないか! 僕だって少しは夢を見たって……」

「変態ゴキノコの世界は知らないけど、こっちの世界には温泉にそんな効能はないからね」

「えっ、そうなの?」


 初めて聞かされる驚愕の事実により希望を無残に打ち砕かれた僕は、ジト目でキノッピーを見るも、やれやれと言った様子で肩をすくめるそぶりを見せる。


「こちらの世界のことはわからんからな。仕方ないだろう」

「それはそうなんだけど……」


 謝って欲しいわけじゃないんだけど、少しは悪気を感じて欲しかった僕は、キノッピーの尊大な態度に顔をしかめる。


「まあ、無いなら、ここでいいんじゃない? ……どこでもいいよ」

「ふふふ。拗ねちゃって。そんなに私が羨ましかったの?」

「……」


 僕が投げやりに決めると、美咲が僕の顔を覗き込んで微笑んだ。その様子に僕は恥ずかしさを感じて無言のまま顔を背けてしまった。


「まあ、いいわね。ここにしましょうか」


 僕たちは女湯に入ると、服を脱いで浴室へと向かう。身体にタオルを巻きつけていても、服を着ていないことで僕と美咲の戦闘力の差をはっきりと実感させられる。ただでさえ、背が低くなってしまった僕は外見だけで言えば完全に小学生であった。


「何見てるのよ。さあ、入る前に身体を洗ってからね。葵は私が洗ってあげるから、ほら、ここに座って」


 そう言いながら、美咲は自分の前に椅子を置いた。


「いや……。自分で洗えるから……」

「ええ、一緒に入ったんだし、そのくらい良いじゃない」


 強引に腕を掴まれて椅子に座らされると、ボディソープで背中を洗い始めた。そして、彼女の手が脇の下を通って僕の前へと伸びてきた。


「ひゃぅぅ、ちょっと……」


 伸びた手が僕の胸をマッサージするように優しく触れてくる。それは女性としては無きに等しい大きさにもかかわらず、彼女の手の感触を僕の身体に的確に伝えてきた。


「こうやってマッサージすると、大きくなるっていうからね。念入りにやらないとね」

「ひゃぅ、あふぅ……」


 もどかしい感触に身体が勝手に動きそうになるのを堪えつつ、マッサージが終わるのを何とか耐えた。その後も、色々ときわどい部分を洗われて、その度に身もだえする羽目になったが、僕が耳と尻尾を出して距離を置いて威嚇したため、そこで終わりになった。


「もぅ、いつも僕を揶揄って……」

「ゴメンゴメン。でも、顔を真っ赤にして威嚇する葵がワンちゃんみたいで可愛かったわよ」

「……」


 可愛いと言われて、僕は恥ずかしさのあまり顔を背けたが、尻尾が思いっきり振っていたようで、さらに揶揄われてしまった。


 そんなこんなで温泉を堪能した僕たちは定番のコーヒー牛乳を飲んで温泉を後にした。十分にリラックスできたお陰か、少しだけ身体が軽くなったような気がした。その後、宿に戻って夕食の時間となった。


「うわぁ、凄い豪華な食事だなぁ」

「そうねぇ」


 僕たちの前には、色とりどりの料理が並んでいた。ご飯にお吸い物、刺身の盛り合わせに茶碗蒸し、生麩の炊き出し、天ぷらの盛り合わせ、ローストビーフ、デザートとしてフルーツのゼリー寄せまであった。


「お飲み物は何になさいましょうか?」

「えっと、オレンジジュースで」

「私も」


 お願いすると、すぐに注がれたオレンジジュースが僕たちの前に並んだ。


「それじゃあ、いただきます!」

「いただきます」


 僕たちは手を合わせてから食事を始める。食べる前は量が多いなと思ったけど、意外とあっさりと食べきってしまった。そして、食事を終えた後は宿の温泉でゆったりとしてから布団に入る。

 もちろん身の危険を感じた僕は美咲の布団との間に衝立を立てておくのを忘れない。布団に潜り込んだ僕は、これまでの疲れもあってか、あっさりと眠りに落ちてしまった。


 翌日、無事に目を覚ました僕たちは、朝食を食べて箱根観光に行くことにした。ガイドブックを見た僕はとある神社のことが何故か気になってしまい、そこに行くことを提案した。


「この神社行ってみたいんだけど、いいかな?」

「うーん、かなり寂れていそうな稲荷神社だけど……。葵が行きたいなら、途中の道にあるし、寄っても良いかな」


 美咲もしぶしぶと言った様子だが、行くのに異論は無いらしかった。もっとも僕自身、何度見てもガイドブックに載っているのが不思議なくらいに寂れた写真しかない神社なのに、なぜ行きたいと思うのか自分でも分からなかった。


「まぁ、葵の目的の1つでもあるし、仕方ないか……」

「えっ、何か言った?」

「いえ、何でもないわ」


 美咲が何かブツブツと言っていたが、聞き返しても何も教えてくれなかった。この時は神社に行くことが決まって、不思議なほど高揚していたために深くは追及しなかったが、この時、ちゃんと問いたださなかったことを後悔することになるとは、その時の僕は全く予想していなかった。


この作品を読んでいただきありがとうございます。

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