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Fランク学園のSランク能力者~最底辺と呼ばれた異能力者は魔法少女となって理不尽な世界に立ち向かう~  作者: ケロ王


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第11話 これはキノコ料理ですか? いいえ、魔王料理です!

「えっ?! 何これ……?」


 真っ二つにされたキノッピーを見た瞬間、頭の中が真っ白になった。美咲は事も無げにキノッピーの亡骸を拾う。


「それじゃあ、中に入りましょうか。急いで!」


 そう言って、彼女は家の中に入ると台所へと向かった。僕も、状況が分からない中、彼女の背中を追って台所へと入る。


「ちょっと! なんでキノッピーを……」

「葵の力はまだ回復していない。そんな中で影山の異能力を受けたら、死ぬ可能性があるわ」

「だからって、キノッピーを殺すなんて……」

「大丈夫よ。それよりさっさと料理するわよ」


 そう言って、手際よくキノッピーの手足を切り落とし、一口大のサイズに切り分ける。そして、フライパンにバターを溶かして、キノッピーを軽く炒めた。仕上げに塩コショウを振って、さらに盛り付けると、僕の目の前に置いた。


「さあっ、キノッピーのバター炒めよ。早く食べなさい」

「えっ? えええ……」


 見た目はほとんどエリンギのバター炒めなのだが、元がキノッピーだと思うとあまり箸が進まなかった。しかし、力を回復させないとマズいのは理解していたので、思い切って口の中に放り込む……。


「おいしい!?」


 予想以上にキノッピーのバター炒めが美味しかったので、次々と口の中に運んでいく。そして、1分もかからず食べ尽くしてしまった。


「ふぁぁ、凄いエネルギーが……。でも、キノッピーが……」


 バター炒めを食べ終わった僕の力は、溢れるほどに漲っていた。しかし、その代償としてキノッピーを失ったことにショックを受ける。


「気にしなくて大丈夫だって、そろそろだから……」

「おい、貴様! よくもワシを殺そうとしたな! それどころかバター炒めにするなど、不敬であるぞ!」


 美咲が言い終わるよりも早くキノッピーの怒号が台所に響き渡る。


「えっ、キノッピー?!」

「復活したか、変態ゴキノコめ……」

「ど、どういうこと?」


 状況についていけていない僕は、美咲とキノッピーを交互に見つめる。


「どうもこうも、こいつは殺しても死なないのよ。どうせ葵の部屋に胞子ばらまいてるんでしょ? 殺してもしばらくすると生えてくるわ」

「だとしてもだ! ワシを殺そうとするなど不敬だぞ!」

「……もしかして、ゴキノコって?」

「異常にしぶといキノコって意味よ。全部合わせてロリコンのしぶといキノコって意味」


 想像通りの酷い理由であった。だが、よく考えてみると、美咲の言うことにも一理あった。


「んなわけあるかっ! 確かにワシは復活場所さえ用意しておけば無限に蘇ることができるが、あんなものと一緒にするでないわ! しかも、最初にも言ったが、ワシはロリコンではないぞ! お前が契約した時に幼女になっただけではないか!」

「うーん、でも他を知らないから否定できないんだよね……」


 僕が困ったように笑いながら言うと、キノッピーは拗ねて消えてしまった。消える間際に「ありがとう」と一言だけお礼を言うと、機嫌が直ったとまでは言わないまでも、少しだけ態度が軟化したように感じた。


「さて、これで準備は問題ないかな? 美咲お姉ちゃんは大丈夫なの?」

「どういうこと?」

「疲れているなら、それ食べておいた方が良いのかなって」

「いやいや、それ私には毒だからね? 食べたら死ぬかもしれないから」

「えっ、毒っ?!」


 毒と言われて、僕は慌ててしまう。先ほど思いっきり食べてしまったこともあり、少し気分が悪くなってきたような気がした。


「うう、なんか気分が悪くなってきたよぉ……」

「それは気のせいよ」

「いやいや、ホントだって!」

「あれが毒なのは人間に対してだけよ。葵には超回復料理ってところになるかしらね。だから気分が悪くなったのは気のせいよ」


 キノッピーの尊い犠牲で生き延びることができたことは純粋にありがたいと感じるのだが、一方で人間辞めたと改めて言われたようで素直に喜べない自分がいた。

 心の中で僕が葛藤をしていると、突然サイレンの音が鳴り響いた。


「時間だわ。来るわよ。一般人でも死なないくらいに抑えてるはずだから、大丈夫だとは思うけどね」


 彼女の言葉の直後、僕は激しい脱力感を感じて、その場に思わずへたり込んでしまう。


「葵、大丈夫?」

「う、うん。何とか……。思っていたより体力奪われるね。美咲は大丈夫なの?」

「まぁね。私は初めてじゃないから。そうは言っても、しんどいのは変わらないけどね」


 そんなことを言っている間に、体力を奪われる感覚はなくなっていった。周りには生き残っていたネズミの死骸がきれいなまま散乱していた。


「とりあえず、避難しても大丈夫そうかな?」

「そうね」


 僕たちは無事な人たちの避難経路を確認してから、戻って避難誘導をした。他の異能学園の生徒も、僕たちにならって無事な人たちの誘導をしていた。僕の母親も含めて大方避難が終わったようで、仮設の避難場所では人々が無事だったことに胸を撫で下ろしていた。


「これで終わりかな?」

「いえ、まだよ。動けない状態の人が残っているわ」

「そっか、そうだよね」


 今、ここに避難してきた人は自分から動ける人たちであった。しかし、ネズミたちに襲われて生きているけど動けない状態の人間も相当な人数がいるはずであった。


「葵、私たちも行くわよ」

「わかった」


 どのくらい力になれるかは分からないけど、人数が多い方が良いのは理解できたため、彼女の言葉に頷くと再び中へと入っていく。


「葵は……何か聞こえたりする?」

「うーん、うめき声のようなものはいくつか聞こえるけど……」

「それじゃあ、その中から女性の方に行きましょう」

「えっ、なんで女性限定なの?!」

「さっきの映画を見てたなら、理由はわかるんじゃない?」


 僕は彼女の言葉にハッとした。映画の中ではネズミに襲われた女性が次々とネズミ人間のような化け物を出産しているシーンがあった。それらは瞬く間に成長し人々を襲っていったのである。


「まさか……。ネズミ人間が?」

「そのまさかよ」


 はたして僕たちが女性のうめき声の方に行くと、ちょうど女性の中から異形の物体が排出されていた。それは1分と経たないうちに立ち上がり、小学生くらいの大きさに成長していく。

 その姿は全身がネズミの毛に覆われていて尻尾が生えていた、しかし、何よりも首より上がネズミの頭をそのまま大きくしたような形をしていたのである。


「なにこれ……」

「気を付けて、ああ見えて動物並みの運動能力があるから。今の葵と同じようにね」


 今の僕と同じ……。それは僕が持っている身体能力という優位性が無いと言うことを意味していた。


「来るわよ。ちなみに負けたら……、あの女性みたいにネズミ人間を出産することになるから、頑張ってね!」

「えぇぇぇぇ……。しょうがないなぁ……」


 流石に負けて彼女みたいになるのはイヤだったので、急いで変身の呪文を唱える。


愛の輝き(シャイニングラブ)胞子の心(スポアハート)!」


 呪文を唱えた瞬間、僕の身体の中から力が溢れて耳と尻尾が生える。そして、着ている服が消えて巫女服に替わり、右手に宿星剣が現れた。無事に魔法少女になった僕は、

 僕は顔を歪めながら、イヤらしい目で僕たちを見るネズミ人間に向かっていった。


この作品を読んでいただきありがとうございます。

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