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私のアイオル

「さて、採寸もおわったし、コマちゃんの元気が残っていれば、本を見に行こうかと思ったけれど……その服じゃ目立つわね。ドレスが届くまで、家でゆっくりしてね。」

 正直、体力の限界が来ていた。いろんな人にあったし、馬車で移動したし、へとへとだ。

「結構疲れたので、休みたいです。」

「それならよかったわ。夕食ができたらエリが呼びにくると思うから、それまでお部屋で休んでいましょうか。お部屋の場所はもうわかる?」

「はい、1人で行けます。」


 ゆっくりおやすみ〜というリオナ夫人の声を背に、階段を上がり、自分の部屋に入る。

 驚いたことに、大きな本棚がもう作りつけてあった。


「本棚……早い……」

「男爵様は家具職人もお呼びしていたようです。おやすみの際、私がお邪魔でしたら出ていきますが、どうされますか?」

 ずっと私の後ろに控えて、ついてきていたエリがそう言った。

「まあ、1人で休みたいかな。」

「わかりました。夫人がされましたように、アイオルを2回叩くと私が伺います。」

「あ、私それまだ持ってない……」

「それはいけませんね。夫人に伝えてきます。少々お待ちを。」


 エリは、扉の音を立てることもなく静かに出ていった。表紙の光る本……『ネヴァーディング王国の歴史』を本棚の端に置いて、しばらくすると、リオナ夫人とエリが戻ってきた。


「ごめんね、コマちゃん。大事なことを忘れていたわね。はい、これがあなたのアイオルよ。」

「ありがとうございます。」

 渡されたのは、転生前に使っていたのとほぼ全く同じスマホだった。

「使い方は大丈夫かしら?私がしたように、アイオルを持って手で2回叩くと、使用人に伝わるわ。」

「私が知ってるスマホと同じなら、使い方はわかります。」

「多分大体同じよ。わからないことがあったら、エリを呼んでね。じゃあ、少しの時間だけど、ゆっくりおやすみなさい。」


 リオナ夫人とエリが出ていくと、コマはベッドに寝転がった。手には渡されたアイオルがある。画面を1回タップすると、植物の写真が背景のロック画面が現れた。画面下からスワイプすると、開いて、色々なアプリが入っている。


 iPhoneとまるっきり一緒だ……


 iPhoneの開発をしていた人も転生してきたのかな。

「オール、これを作ったのは誰?」

『はい。私はエリック・シャリンジャー創設の、電子機械部によって作られました。』

「オール、電子機械部って何?」

『はい、電子機械部は、王宮内にある部署の1つで、異世界からもたらされた技術を研究、開発する部署です。』

「やっぱり、王様が絡んでるんだ……」


 なんとなくそんな気がしていた。アイオルという名前、貴族には支給されるということ。王様が所持を奨励しているということ。

 これを考えてしまうと、もはや陰謀論者なので、あまり考えたくないが、一つの考えが頭を過ぎる。


 みんなのデータを集めてる…?


 データを集めたところでどうなるかまでは、コマにはわからなかったが、集めると何か利益がありそうなことぐらいはわかる。


 アイオル、あまり使いたくないな……


 コマはベッドサイドのサイドテーブルの上にアイオルを置くと、できるだけ遠くまで転がって、静かに目を閉じた。

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