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か、かわいい……

 玄関には、執事やメイドのような人たちと、薄茶色の髪の男の子と茶色がかったピンクの長髪の女の子が待っていた。


「「「おかえりなさいませ」」」

「おかえりなさい、お父様、お母様。」

「その子が異世界の子?!かわいい〜!」

「ただいま、セレナ、ライル、みんな。ライル、そうだよ。自己紹介できるかい?」


 ブライアン・ネンリネン男爵はそう言うと、コマの方に顔を向けた。


「あ、はい……比企(ひき)コマです。よろしくお願いします。」

「ヒキっていうんだ!よろしく!僕ライル!」

「多分お名前はコマの方ではないかと……コマさん、よろしくお願いします。セレナと申します。」

「日本式ってやつか〜、王様みたい!コマ、よろしくな!」

「よ、よろしくお願いします……」

 元気なライルと、しっかりしたセレナに圧倒された。

 自分はどちらのようにもなれそうな気がしない……


「コマちゃん、挨拶は済んだわよね?仕立て屋を呼んであるの。ドレスを仕立てましょう!」

 リオナ夫人に手を取られ、屋敷の中に入る。


 屋敷の中は綺麗に掃除してあり、品よく調度品が置かれている。2階に上がり、やや奥まった一室に案内された。

「ここがコマちゃんのお部屋よ。コマちゃんが置きたい者もあるかもしれないと思って、家具は最低限にしてあるわ。」


 その言葉通り、窓から遠いところに天蓋付きのベッドがあり、大きなクローゼットと引き出し付きの鏡台がある。まだ何か置くこのとできるスペースは十分にあった。

「じゃあ……本棚が、欲しいです。この世界の本も、読んでみたいので。」

「いいわね!本がたくさん増えてもいいように、大きい作り付けのものを、日差しが入らない窓側に置きましょう。鏡台は廊下側に移動しないとね。」


 コマは、ふと鏡台を覗き込んだ。そこには、元の自分とは似ても似つかない、かわいらしい顔があった。少しぐらいは面影あるかな……?ないかな?と思う程度である。顔のパーツは理想的な位置に理想的な大きさで配置されていて、垂れ目のピンクの瞳に、髪は優しいピンク色のボブカットだ。年齢はやはり6歳程か。

「か、かわいい……」

「あら、今更気付いたのね。そっか、あの施設には鏡がないんでしたっけ。そうよ〜コマちゃん、かわいいの!初めて見た時、天使かと思ったもの。ちょっと人を呼ぶわね。」


 リオナ夫人はアイオルを持って、そのまま2回手で叩いた。


「お呼びでしょうか。」

「失礼致します。」


 ロマンスグレーの短髪を後ろに撫でつけた、執事のような人と、茶色のボブカットのメイド服を着た人が、扉の外で待っていたかのような速度で現れた。


「コマちゃんが、本棚が欲しいそうなの。日差しが入らない場所に、大きいのを注文してちょうだい。そして、この子があなた付きのメイドよ。」

「本日から、比企コマ様直属のメイドとなります。エリと申します。」

「えぇっ、私付き?」

「コマちゃん、貴族の一員になるのよ?1人に1人以上は専属のメイドが付くのは、当たり前のことなの。申し訳ないけど、慣れてね。」

「えと、あの、エリさん、ご迷惑をおかけするかもしれませんが、よろしくお願いします……」

「迷惑だなんて、そんなことは思いません。異世界からの方に付くことができるなんて、私は幸せ者です。それと、名前はどうか呼び捨てで、エリとお呼びください。敬語もいりません。」

「え、え、エリ……よ、よろしく」

 コマは初めてのことばかりで色々といっぱいいっぱいになりながらも、どうにか返答した。


「さて!仕立て屋さんを呼んであるって言ってたわよね。早速採寸してもらうわよ。」


 リオナ夫人に手を引かれ、屋敷の一階に降りた。エリもついてきた。応接室に入ると、そこにはメジャーや布など、様々な物が広げてあった。


「ネンリネン男爵夫人、ご無沙汰しております。この度は異世界転生者の扶養決定、おめでとうございます。不束ながらこのノワール、誠心誠意尽くさせていただきます。」

「この子はコマちゃんよ、とってもかわいいから、このかわいいお顔を引き立てる、ドレスと部屋着を5着ずつお願いするわね。」

「えっと、よろしくお願いします……」


 なされるがまま、表紙が光る本を置き、採寸用の台に立ち、あちこちの長さを測られる。ここまで着てきた、手術着じみた白いワンピースは、採寸にもちょうどいいようだ。


「お好きなお色はありますか?」

「うーん、薄い青とか緑とかですかね……」

「パステルカラーの薄い青と緑のものをお作りしますね。生地のお好みはありますか?」

「えっと、何もわかんないので……着心地のいいものがいいです。」

「承知しました。着心地優先で選ばせていただきます。」

「水色だなんて!私のドレスと合わせてくれるのね。ますます私の子供みたいで嬉しいわ!」

 コマにそんな意図はなかったが、否定するのも忍びないので、何も言わないことにした。


 採寸がおわり、カタログを見せられながらドレスの形を選ぶ。ドレスなんて着たことないけど、あんまり派手なのは嫌なので、できるだけシンプルなものを選んだ。


「シンプルなものの方が、コマちゃんのかわいさが引き立つわ。いいセンスね!」

 何をしても褒められるのか……?少々座りの悪い気持ちである。


「部屋着はすぐにお持ちします。1枚だけでしたら、今日中にでも。それ以外の部屋着は今週中に、ドレスは時間がかかりますので、1着を今週中に、あとはできるだけ急ぎますが、少々お時間をいただきます。」

 申し訳ありません、と頭を下げるノワールに、リオナ夫人が優しく微笑みかける。

「超特急じゃない。流石ノワール裁縫店ね。少し遅れてもいいから、丁寧にお願いね。」

「畏まりました。」

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