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アイオル

「王都から近くてよかったよ。半日で着くからね。」

「そうねぇ。この国は色んな異世界人が色んな所に来るけれど、コマちゃんは私たちの家が近くて幸せね。人によっては、1週間も旅しないといけない人もいるのよ。」

「そう……なんですね……」


 正直、半日でも遠いと感じるが、それは異世界では贅沢なのかもしれない。街の地面はある程度舗装されているようだが、街を出たら土が均されているぐらいだった。少し揺れるが、おそらく高級な馬車なのだろう。土の道を走っているとは思えないほどには快適だった。


「今から一緒に生活するんですもの、私たちの話をしましょうか。」

「そうだね。これが私たちの写真だよ。」

 ブライアン・ネンリネン男爵はそう言いながら、懐からスマホのような端末を取り出した。画面を操作し、コマに差し出す。


 そこには、4人の家族の写真が映し出されていた。薄茶色の髪のブライアン・ネンリネン男爵と、薄ピンクの長髪のリオナが並び、その前に、10歳程の茶色がかったピンクの長髪の女の子と、8歳程の薄茶色の髪の男の子が並んでいる。


「女の子がセレナで、男の子がライルだ。親バカかもしれないが、2人ともとてもいい子なんだよ。」

「そうねぇ。セレナは賢くって、なんでもすぐ覚えてしまうし、本も大好きよ。ライルはまだ外を走り回るのが好きだけど、勉強もちゃんとする子だわ。」

「あの……これって、なんですか?」

「おや?写真は見たことないかい?」

「いやそうじゃなくって、この端末……って言えばいいのかな」

「あぁ、これはね、アイオルっていうんだ。こうやって写真も撮れるし、オールって言ってから何か聞くと、なんでも教えてくれる、便利なものなんだよ。貴族はみんな支給されているんだ。コマさんにも支給されるよ。」

「へぇ……スマホみたいですね。」

「異世界ではスマホっていうのかい?確かにスマホとやらをモチーフにしたとか、聞いたことあるような気がするね。」

「やだ、あなたったら。教養の基本でしょう?異世界人は基本的にスマホを持っていたから、アイオルに慣れるのが早いって。」

「そうだったね。貴族はみんな持っているが、使いこなせていない人も多いみたいなんだ。平民も持っている人はいるけれど、以前までは高級品だったからね。持っているのは基本的に貴族だよ。」

「以前まで……?」

「最近、といっても5年ほど前かな。王がアイオルの所持を奨励しはじめてね。価格が大幅に下がったんだ。それで便利だってのは前から評判だったからね、商人とかを中心に、平民も結構持ち始めたんだ。」

 アイオル、オール、I all…?わたしは全て…?

 コマはどことなく嫌な感覚がしたが、それに対して考える暇もなく話は続いた。


 軽食を食べながら談笑しつつ、半日ほど馬車は走り、王都に着いた。門では貴族用の列に並んで入った。さほど待つことはなかった。王都に近付いてから、王都の中までの道はアスファルトのようなもので舗装されていた。


「建築家の異世界転生者もいらっしゃったんですか?」

「おぉ、よくわかったね。建築家というより、彼の自称は土木屋だったけれど、この世界では立派な建築家だよ。彼が来てから道も綺麗になってね……」

「そうねぇ。もしよければだけど、コマさんはどんな仕事をしていたかとか、教えてくれる?」

「あ、その……ごめんなさい。私、仕事とかはしたことなくて……」

「あら、そうなのね。謝ることじゃないわ。そんな人もたくさんいるもの。人間、好きなことさえあれば立派なものなのよ。」

「ありがとうございます……?」

「お、着いたぞ。ここが私たちの家、そして、これからのコマさんの家だ。」


 窓から外を見ると、広く手入れされた庭の先に、二階建てのそれなりに大きな家が建っていた。

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