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お引越し

 ここに来て、というか、異世界転生とやらをして、ネヴァーディング王国の病院で目を覚まして、一週間が経った。その間、この世界の病原菌の為の予防接種を受けた後は、私は毎日の健康チェックの他は何もすることがないようだったので、もらった本を読んでいた。


 『ネヴァーディング王国の歴史』という本は面白かった。建国の王は日本人で、町井貴志王。貴志って……あの院長さんと同じ名前じゃない?元々の言語もあったが、町井王の影響で、公用語は日本語。次に転生してきた人はアメリカ人で、その人がキリスト教を広めたので、英語も使われているようだ。

 人々は、日本式に漢字で名字名前の順で名乗ったり、欧米式に英語で名前名字の順で名乗ったり、そこは自由らしい。敬虔なキリスト教徒は欧米式になるのかな。

 昔の人も転生してくることがあるみたいだけど、所謂現代人が多いようで、慣れるのが大変そう。パッと見た限り、地球で有名になってる人はいないようだった。私の世代より未来の人も転生してきてるみたいで、その人が技術革命を起こしたとか、フランス料理人とイタリア料理人と日本料理人が来て、料理界にも派閥があるとか、色々書いてあった。


 今日も特に何もないんだろうな、と本を開こうとした時、看護師さんから声がかかった。


「コマさんの扶養先が決定しました。ネンリネン男爵家です。」


 びっくりした。そもそも人から話しかけられるだけで、びっくりするタチなのだ。

 ちょっと待って、扶養先?ずっとここじゃダメなの?まあ……ダメなんだろうなぁ……


 でも決定する前に、扶養されることになるとか、条件とか、前もって言っておくべきなんじゃないだろうか。確かにあの本には、異世界人は貴族の家の中で、問題ないと判断された家で扶養されるとは書いてあった。


 問題ないって、何が?判断って、誰が?


 そう頭に強く疑問を持って読み進めても、その話題はそれだけで、後から掘り返されることはなかったから、ずっと疑問のままだ。


「あの……ネンリネン男爵様って、どんな人なんですか……?」

「王都で、この国の内政を担当されている貴族様です。勤務態度、生活態度、家庭内環境の全てが問題ないと判断されましたので、ネンリネン男爵様に決定いたしました。」

「そういうことじゃないっていうか……まあそれも気にならなくはないけど……あ、じゃあ、奥さんとか子供さんとかはいるの?」

「奥様、御子息、御令嬢がいらっしゃいます。御子息は8歳、御令嬢は10歳です。」


 えーっと、今の私の見た目、ここって多分意図的に鏡がないから、客観的に見るのが難しいんだけど、目線の高さ、腕の長さ、手指の丸っこさから考えるに、多分大体5〜7歳ってとこ……か??主観だとわっかりづらいなこれ!鏡プリーズ!

 その歳の男の子が年下の女の子、しかもよくわからないとこの出のやつとか、いじめられる気しかしないんですが?!?!またいじめられるんですか????


「えっと……辞退とかって……」

「それはできません。本で読まれたかと思いますが、ここでは異世界転生者は問題のない貴族の家で、この世界の常識やしきたりを学んでいただく決まりになっておりますので。」

「ですよね……あの、問題のないってどういうことですか?」

「先に言いました通り、勤務態度、生活態度、家庭内環境に問題がないということになります。家庭内環境が御心配なのでしょうが、奥様のリオナ様は穏やかな気質で、基本的に何かを強制することは致しません。御子息のライル様は好奇心旺盛ではありますが、礼節は弁えていらっしゃいます。御令嬢のセレナ様はお淑やかで、本や刺繍など貴族教養に、10歳らしからぬほど精通いたしております。」


うーん……それなら大丈夫なのかなぁ……?


「わかりました……いつから行くんですか?」

「準備ができましたら、今日からでも。」

「え?!まあ、準備するものなんてこれといってないから……いいけど……」

「扉の外でお待ちしておりますので、準備を済まされましたらお越しください。」


 荷物などないので、着の身着のまま、本だけを持って扉を開けた。


「こちらです。」


 院長室とは別の方向に歩いていくと、また重厚な両開きのドアがあった。看護師さんがドアを開き、軽く礼をした。真似して敬礼程度のお辞儀をして、部屋に入った。

 そこには、30代ぐらいの優しそうな男の人と、同じぐらいの女の人がいた。男の人は薄茶色の髪で丸みのあるショートで、シワはほとんどなく、若々しい。服装は貴族っぽい出立ちだ。女の人は薄ピンクの髪を長く伸ばし、軽く結んでセットしている。水色の大人っぽいドレスがよく似合っていた。

 ソファーが2つ向かい合わせにあったので、男女の前のソファーに座る。看護師さんは背後に立った。


「私はブライアン・ネンリネン。王都で内政官をしている者だ。比企コマさんだね。これからよろしく頼むよ。」

「妻のセレナです。好きなことがあれば言ってちょうだい。できるだけ希望を叶えるわ。」

「あ、あの、よろしくお願いします……」


 初めての人は、やっぱり少し怖い。手に持った本をぎゅっと抱きかかえた。


「もしかして、本が好きなのかしら。娘と気が合うわ!」

「本は、好きです……いじめてこないので……」

「あぁ、異世界人がいじめられていた人が多いというのは、よく聞く話だ。私の家にいる限り、そんな真似は一切させないとも。」

「貴族や貴族の従者は、異世界人との触れ合い方をしっかり学ぶのよ。あなたに意地悪するような人は家には居ないわ。」

「それは……よかったです。私が何の役に立てるかはわかりませんが……これからよろしくお願いします。」

「何の役に立たなくたっても構わないわ。コマちゃん、かわいいもの。」

「かわいい……?」


 もしかして、容姿も変わっているのだろうか。鏡がないからわからない。


「家には仕立て屋を呼んであるわ。そんなに可愛いんだから、目一杯オシャレしなくちゃね。」

「さあ、ここに長くお邪魔するのも悪い。家に帰ろうじゃないか。もちろん、コマさんも一緒にね。」


 もう一つ、入ってきた扉の反対側の扉を看護師さんが開けると、馬車が停まっていた。


「自動車も欲しいんだけどね。高いし整備が大変だ。」


 御者が踏み台を置き、3人とも乗り込むと、馬車はゆっくりと動き出した。

ここまでいかがでしたでしょうか。


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