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序章

誤字脱字報告または感想あれば幸いです

 気づいたら別の世界にいたって経験をしたことがある人はいるだろうか?

 俺はまさしくその現象に見舞われることになったのだが、まさか自分が異世界に飛ばされるなんて現実として起こるはずも無いと思っていたんだ。

それは全てフィクションであり、創作の世界でしか起こりえないことであると……


・・・


 駅のホームから突き飛ばされ電車に轢かれそうになったところ、気づいたら深い森の中にいた。

「はっ?何ここ、電車は?俺死んだの?生き返ったの?」

 何が起きたかまったく分からない状態で森の中に佇んでいた。

 スマホを開いても圏外なのは当たり前。

 持ち物はスクールバッグに入れた学校の教材一式と財布、学生証、ペットボトルのお茶、そして筆箱のみ。

「とりあえず、森を抜けよう」

 熊などの肉食系の野生動物と出会う危険性もあるため、森を出るという目標を立てる。

 まずは周囲を見回してみる。

 目利きは大事、TRPGの基本な。

 不安は感じているが、非日常感にワクワクもしていた。

「おっ、あっちだけ向こう側が少し明るい気がする」

 明るいということは日の当たる場所というわけだ。

 道路に出たら道に沿って移動すればいい。

「よし行こう」

 足元に注意しながら歩いて進んでいく。

「それにしてもデカい木だな」

 樹齢とかは分からないが通っている高校に植えてある木よりも二回り程大きい木がそこらじゅうに生えている。

 15分程歩いただろうか。

 とにかくしばらく歩いていると、開けた場所に出た。

「こんな場所を見る機会があるなんてな」

 そこで目にしたものは、アニメに描かれそうなほど綺麗な草原である。

 くるぶしぐらいの高さの草が辺り一面に生えており、これぞまさにザ草原といった感じだ。

「ん……?なんだあれ」

 視線の先には少しぼやけているが、洞窟のようなものが見える。

「一応見に行ってみようか」

 動物が住処にしていることも想定されるが何かしら得るものはあるかもしれない。


・・・


「これは……洞窟……なのか?」

 近づいて見てみると、下に階段が続き、その先には扉が設置されていた。

「それにしても……」

 人間は一人きりになると独り言が増えるという。

 まさに今それを体感していた。

「人の声が恋しいから自分で声を出してるってか?」

 理由こそ知らないがあながち間違いでも無さそうな気はする。

「……とりあえず入ってみるか」

 中に何があろうと、見てから考えればいい。

 そう思って階段を降り、取っ手を捻り扉を開けた。

 そこにあったもの、いや、いたのは魔法陣の中心で祈りを捧げる聖職者の女性だった。

「……えっと」

 声に反応して彼女は新緑色の長髪をなびかせながら振り向き、その翡翠色の綺麗な目でこちらを見つめた。

 整った顔立ちに目が奪われる。

 彼女はまばたきを一つすると、おずおずと尋ねてきた。

「あの、あなたが召喚の儀式で呼び出された方でしょうか?」

 一瞬だけ頭の中を厨二病という単語が駆け抜ける。

「違います」

「ああ、そうなんですね。これは失礼しまし……って絶対あなたですよね!?見たことない服装していますし!」

 ここで1つの可能性に思い当たる。

 異世界転移。

「いや、待て待て待て待て!それはありえんだろ!?」

 自分の考えを即座に否定し、つい口をついて出た言葉に、彼女は自分の質問に否定されたと思ったのだろう。

「いや絶対あなたですよ!ちゃんと召喚の儀式は成功しましたもん!……本来ならここに直接出てくるはずだったんですけど」

「森の中に放り出されてたのですがそれは」

「なにかの不具合です」

「ならしょうがない」

 ついネタのような返答をしてしまい、自分は召喚された者という事を教えてしまった。

「あなたにお願いがあります」

「それは魔王を倒すお仕事ですか?」

「違います」

「それは勇者になることですか?」

「それも違います」

 テンプレではない……だと……!?

「なんですか、最近流行りのもの当ておじさんですか?」

「アキネイターでは断じて無い」

「もうっ!話が逸れてばっかりじゃないですか!」

 ぷんぷんと擬音が付きそうな怒り方をする彼女は可愛くしか見えなかった。

「ここから西に行った先にある帝国には、私の仲間が囚われているのです。帝国は悪逆非道で、私の仲間達も奴隷として扱われてしまって……。それで、私の仲間達を助けて欲しいのです!」

「え、嫌です」

即答だった。

「ですよね!これを聞いて断れる人なんて……って断られました!?」

「うん、だって面倒ですしこっちに利益無いですしおすし」

「そんなぁ……。で、でも!私が召喚しなかったらあなたは死んでいたのですよ!」

「人の寿命を勝手に変えるなあの場で死ぬのが俺の運命だ」

 本当はまったくそんなこと思っていなかったが、言ってみたかっただけである。

「えっ?あ、その……すみません」

 しゅんとされた。ちょっと罪悪感。

「いやそもそもなんで俺が死ぬところだって分かったんですか?」

「それは、死の直前にいる者で、私の力を最大限扱える者が召喚者の条件だったからです」

「へぇ……。え、ちょっと待って。力ってなんです?」

 既にファンタジー世界だとは思っていたけどまさか目の前の人は人外だったりするのだろうか。

「えっと、私は風の原初精霊のシルフィ・ウィンドです。あなたの世界には精霊はいないのですか?あと、お名前も教えて欲しいです」

「白城戒と言います。自分がいた世界には精霊はいませんでしたね」

「そうなのですね」

 精霊さんが相槌を打つ。

「……。」

「……。」

 しかしそこで会話が止まってしまった。

「えっと……」

 彼女は目を泳がせながらどう話せばいいか考えてるように見える。

 少しすると、決心したような顔で話し始めた。

「あの、私の仲間というのは他の原初精霊達なのです。みんな捕まってしまって、あとは私だけなんです。どうか……どうか、私と、みんなを助けてください!」

 ガバッと音がしそうな勢いで頭を下げ、真摯にお願いされる。

 さすがにここまでお願いされてしまうと断れる気はしない。

「……わかりました。そこまで言われるなら、できるだけのことはやりましょう」

「ありがとうございますっ!」

 彼女の顔がぱあっと輝くような笑顔になった。

 その純新無垢な笑顔に見蕩れてしまう。

「それでは、私と魔力回路を繋ぐ契約をしましょう。それと、敬語は使わなくていいですよ。私は癖でいつもこの話し方になってしまいますが……」

「……え?ああ、分かった。それで、俺はどうしたらいい?」

 見蕩れてボーッとしていたのを誤魔化すように尋ねる。少し頬が赤くなっていたかもしれない。

「えっと、どちらでもいいので手を出してくださいますか?」

「わかった」

 近付いて右手を差し出すと、彼女は両手でそっと包み込むと、顔を赤くしながら自身の豊かな胸の間にその手を埋めた。

「ちょちょちょちょっ!?!?」

 人の胸に手を突っ込んで平然としてられる神経をしているはずも無く、慌てて引き抜こうとする。

「ひゃんっ!?あ、あの動かさないでくださいっ!私だって恥ずかしいんですからっ!!!」

「いやそんなこと言われてもっ!?」

 両手でガッチリ押さえられる。

「魔力回路を繋ぐには体の中心に近いとこに触れてもらわなければいけないんですっ!」

 近いし柔らかいし良い匂いだしで耳に入ってくる言葉が頭で理解する前に抜けていく。

「原初精霊シルフィ・ウィンドが宣誓する、彼の者を主とし世界に改変をもたらす力を貸し与えん!」

 彼女がそう叫ぶと、心の部分の何かが繋がったような感覚がした。

「はいこれで終わりましたっ!」

 そのまま手を胸から離したが、手を繋ぎ合ったままでお互いに肩で息をする。

 心臓に物凄く悪かった。

「はぁ…はぁ…。こ、これで契約をできたんだよな…?」

「ふぅ…ふぅ…。これで、契約は完了ですっ…!」

 しばらくするとさすがに心臓の高鳴りや火照った体も治まってきた。

「えっと、ひとまず手を離してもらってもいいか?」

「へ?……わひゃあ!?」

 シュバッと音が聞こえてきそうなスピードで手を放される。

 そんな早く放されると地味に傷つくのですが……

「す、すみません!」

 なんとも言えないような顔を見たのだろう、シルフィは申し訳なさそうに謝る。

「いや、大丈夫。それよりこれからどうするの?」

 まさかこのまま帝国に乗り込んで切った張ったするわけでも無いだろうし。

「まずは、仲間と合流ですね。レイラーク魔法王国から迎えが来ますのでしばらくここで待っていましょう」

「ん、分かった。その王国と手を組んで帝国をどうにかするって感じなの?」

「はい、私だけではどうにもなりませんから……」

 シルフィは目を伏せながらそう言った。

「あ、この召喚魔法陣も王国の方たちが用意してくださったんですよ」

 それでも無理やり元気を出すかのように明るく振る舞っている。

「あなたが来てくれて、本当に嬉しいです。これからよろしくお願いしますね、カイさん♪」

「あっ……」

 そういえば世界的に見ても苗字が先に付くのは珍しいって聞いたことあるな。

「えっと、苗字が白城で、名前が戒です……」

 一応伝えた方がいいと思ってそう言うと、シルフィは目をぱちくりさせ、だんだんと顔が赤くなっていった。

「え、えええ!?私、初対面の人に名前で呼んじゃってたの!?」

 両頬に手を当て、顔を逸らして悶絶している。

「名前で呼ぶのは特別な関係か、本人から許しを得た時だけなのに!」

 ひとまず落ち着かせようと思い、肩を揺らして声をかける。

「ちょっと待って、俺は気にしてないから。ていうか特別な関係って既にそうじゃないの?だって俺たち契約したんでしょ?」

「あっ……そう、ですね」

 とりあえずは落ち着いたようで、こっちを向いてくれる。

「まあ、名前で呼ばれるのは慣れてないから気恥しいけど、嫌では無いよ。良かったらこれからも名前で呼んで欲しい」

「そうですか……分かりました。では、私のこともシルフィって呼んでくださいね」

 若干の罪悪感もあったであろうシルフィにそう伝えると、彼女ははにかみながら答えた。

 ……ついでに俺にも名前で呼ぶようにお願いされた。

「分かった。……シルフィ、これからよろしく」

 女性のファーストネームを呼ぶのは初めてで少し恥ずかしかったがなんとか彼女の要望に応える。

 それから王国の人が迎えに来るまでにどうやって間を持たせようかと考えるのであった。

続くかなぁ

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