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いつもお読みいただきありがとうございます!

『なんであんた、グレッグとやらにお礼言いたいのよ』

「グレッグだけじゃなくって! その、警備隊の人達に。私が誘拐されて捜索してくれたでしょ」

『それって普通に警備隊の仕事でしょ。あれは仕事しただけよ』

「うぅ……」

『それにこっちはこっちで自力で逃げ出したし、第二王子もいたから事件は公にならなかったのよ? それなのにあんたがノコノコ行ったらバレて迷惑じゃない。何よ、あんた。誘拐から助けてくれてありがとうございました~ってわざわざ言いに行くの?』


 捻った片足を台に上げて、私はプリシラからこき下ろされていた。


『なんなの、大体。昨日からグレンにバレたかもって言ったかと思ったらグレッグ、グレッグって。好きな訳?』

「そういうわけじゃ……ただ、同じ孤児院にいて言うなれば彼は先輩……」

『どっからどう見ても、あんたはグレッグのこと好きよ。何、その顔』

「その顔って言われても」

『恋する女の顔よ。はぁ全く。第二王子にもグレンにもそんな顔しないじゃない。そんなんじゃグレンにバレるのも時間の問題よ。今、あんたは疑われてんの。明日は満月だから私がうまくやるわ。ケーキは出してもらってよ、絶対だからね!』


 どうやら、庭での会話を聞かれて私はプリシラではないのかもしれないと疑われているらしい。でも、孤児院ももうないし……あの孤児院は書類管理なんか特に杜撰だったから証拠なんてあるのだろうか。レイフのように職員から話を聞けば別だが。

 でも、暴力をふるっていた職員の証言なんて信じるものだろうか。


***


 グレンは目の前で四個目のケーキを食べている女を観察した。

 こいつは誰だ?


 誘拐事件の日、確かに目を見て感じた。こいつはプリシラじゃないと。

 その感覚がありありとあったのに、今目の前にいるのは明らかにプリシラだ。昨日までの彼女と違う。


『何よ?』


 グレンが無言で見ていると、あの女が聞いてくる。そう、プリシラといえばこんな表情をする奴だった。


「いや、よく食べるなと思って」

「悪い? ケーキって美味しいじゃない」


 あっという間に四個目のケーキも平らげた。野菜も食べずに。パンは食べていた。そして、チョコレートケーキもあったのに手を伸ばしていない。

 今日の彼女は、リボンを減らしていない服を選んでいる。フォルセット公爵家の侍女が違うものを最初にすすめたにも関わらず、これがいいと強硬な態度だったようだ。


「君は、一体誰なんだ?」

『頭おかしくなったの? プリシラ・エルンストだけど』


 ずっと嫌いだった小馬鹿にしたような態度で言われる。半眼で顎をそらした状態で。こいつは間違いなくプリシラだ。じゃあ、昨日までの彼女は? どこへ行った? まさか、二重人格だったのか?


『治ったら買い物に行きたい。もう療養生活飽きちゃった』

「足りないものがあるなら買ってこさせる」

『私は自分で選びたいのよ、自分で。あんたの使用人に選ばせたら変なのばっかり買うじゃない』


 紅茶のおかわりを要求したいようで彼女はカップを音を立てて置いた。


『おかわりをちょうだい』


 本当に、こいつはプリシラだ。一体、どういうことなんだ?

 思わず、グレンは彼女の手首を向かいから掴んだ。


『何よ?』

「いや、カップはそんなに音を立てて置かなくていい」

『とろいのがいけないんでしょ』


 食事中にプリシラを目の前にしていた時は、疑問と違和感で頭と心がモヤモヤしていた。

 今日は手首を急に掴んでも……怯えていなかった。しかも態度が療養前のプリシラと同じだ。怪我をしてワガママになっているのか? あんなに俺の腕の中では大人しくしていたのに?


 何かが引っかかる。調査結果もまだ出ていないし、何か……レイフに聞くのは癪だし、彼に聞いたところでどうせ裏取りは必要だ。


 待てよ、誘拐事件の日。警備隊の一人を見て彼女は反応していなかったか。それに、誘拐の実行犯や見張りの男たちは捕まったが「銀髪の女」は捕まっていない。

 これは調べてみないといけないだろう。


「坊ちゃま」


 古参の侍女の一人が言いづらそうにグレンに声をかけた。


「なんだ」

「あの……昨日と本日プリシラ様のお着替えを手伝ったのですが……」

「ドレスの趣味が悪い以外に何かあったのか」

「気になることがございます」


 告げられた内容で一つの可能性にたどり着く。エルンスト侯爵家の侍女長にも確認しないといけない。


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