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いつもお読みいただきありがとうございます!

『あんた、バカなの?』

「すみません」

『貴族令嬢って誘拐されやすいのよ。高く売れるから。それかグレンの婚約者になりたい令嬢の家の差し金か。私の外出はほとんどお母様と一緒だったから狙われたのかもね』

「……でも私はもともと孤児……」

『今はどっからどう見ても貴族令嬢よ。しかも美人だとさらに高く売れるの、分かる?』

「はぁ……」


 これはプリシラが自分を美人だと言っているのか。遠回しに私を褒めているのか。


『ほんと最悪。貴族令嬢にとって誘拐って傷モノになんのよ。やだわ、ほんと』

「傷モノ?」

『そうよ、詳しくは言わないけど。婚約解消とかされちゃう理由になんのよ。もし誘拐されたなんてウワサになったら……数時間以内に見つからなければアウトよ』


 あのテントからそこまで離れていない建物の一室に私は閉じ込められた。男がいなくなった途端にプリシラが現れる。それで私はちょっと安心してしまった。


「プリシラはどこ行ってたの」

『あんた、もうちょっと今の状況を怖がりなさいよ。はぁ。私は銀髪の女を見つけて珍しいなって思ってついてってたのよ。凄いわよ、あんたと私にそっくりな顔だったわ』

「え……?」

『そうしたら、あんたを誘拐するみたいな話してんじゃないのよ、その女が。だからすっ飛んで来たらあんたもう誘拐されてるし』

「もしかして……いやそんなことないと思うけど」

『何、まさかあんたの母親とか? そこまでは分かんないわよ。銀髪で緑の目でまぁまぁの美人だったわよ。でもフード被ってたしねぇ。私も透視とか分身とかできるわけじゃないし』

「そっか、そうだよね。私、お母さんの顔も見たことないし、銀髪って珍しいけどいるにはいるし」

『……犯人は追々グレンたちが捕まえるでしょ。あいつらもテントから出てこなかったらきっと探してるだろうし。とにかくこっから早く逃げないと。グレンとの婚約がパァよ』

「パァになったらどうなるの?」


 そこで私とプリシラは首をかしげた。侯爵からはプリシラとしてグレンと結婚しろとしか言われていない。パァになったら……。


『あれ、どうなるんだろ。お母様が私のことを変な男に嫁がせるわけはないし』

「いや、今プリシラとして生きてるのは3番の私だから」


 プリシラはうっかりしていたようだ。


『……そうだったわ。じゃあ……ブタ親父に嫁がされることもあり得るかも。借金や持参金次第で』

「その前に侯爵に殺されるかも」

『そうねぇ、でもお父様は娘を駒としか見てないから。殺すって言ったのは脅しでやっぱり金持ちのブタ親父に嫁がせるわよ。せっかく引き取ってここまでしたんだから』

「とりあえず、逃げないとね」

『私だってブタ親父に嫁ぐの嫌だもの。さっさと逃げるわよ』


 変なの。プリシラは死んでるから嫁ぐのはプリシラじゃなくて私なのに。

 自分の名前でそういったところに嫁がれるのは嫌なのかな。


「でも、まだ見張りいるよ」

『そうね、あんたも縛られてるし。私が触れたらいいんだけどすり抜けちゃうからどうしよう』

「あ、これはいつでも抜けられるよ」

『は?』

「孤児院で一時期子供を縛りあげる罰を職員たちがやってて。縛ったら部屋に閉じ込められるの」

『聞いてるだけで胸糞悪いんだけど』

「ごめんね? 私もされたんだけど、頑張ったら縄抜けできるようになった」

『あんたのいた孤児院ってサイテー』

「もうないから。それに今役に立ちそう」

『分かったわ。じゃあ私が逃走経路を確認してくるから。ちょっと待ってなさい』

「わぁ、お姉ちゃんみたい」

『あんた、緊張感持たないとぶっ飛ばすわよ』

「うん」


 プリシラはシュッと消える。

 変なの。ワガママなら私を助けなくってもいいのに。誰にも助けてもらえないのが普通過ぎて、プリシラが逃走経路をと言い出した時は嬉しいのと驚いたのとで感情がごちゃ混ぜになった。


 とりあえず、手を動かして縄を緩めてなんとか抜ける。足も縛られてるから緩めておこう。


 占い師の老女もグルなのかな。運命が近づいてくるなんて。

 私よりもブレアを誘拐した方がいいのに。彼女の家の方がお金持ちだもん。


 外がさっきよりうるさくなった。何だろうか。プリシラが何か騒ぎを起こしたにしては……彼女は何にも触れられないから無理だ。霊感強い人ならプリシラが見えて騒ぎになってる?


 扉がバンっと開いて誰かが蹴り入れられた。え、何。なになに?

 そのままの勢いで扉は閉まる。蹴り入れられた誰かが身を起こした。オレンジの目と視線が合う。


「あ、ラッキー。同じ部屋だった」

「なんでここに……」

「いや、3番ちゃんが誘拐されたって聞いたから。怪しい男見つけたから尾行したらバレちゃった」

「そこはもうちょっと警備隊と連携取って欲しかったです」


 赤毛の王子レイフが縛られてへらへら笑っていた。


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