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お互いを恋に落とす事をがんばる事になった【本編完結】  作者: シャクガン
デートをがんばる事になった
33/130

11月14日


「好きです!付き合ってください!!」


王道中の王道の告白のセリフ。勇気を出して直接告白してきてくれたのは嬉しい。

最近ではメッセージアプリで告白とかが多いから。でも、私はこうやって相手の告白は直接聞きたい人だ。相手の表情、真剣さが伝わってくる。


メッセージアプリの交換をしてないからこうやって告白するしかなかったのかもしれないけど……


そのくらい私は相手のことを知らない。

多分E組の誰かだった気がするけど……名前すら知らないのに付き合う人なんているんだろうか。


「気持ちは嬉しいけど、ごめんなさい」


私は軽く頭を下げた。


いつもの決まったセリフを伝える。大体の人はこれで諦めてくれる。

稀に食い下がってくるような人は面倒だなと思う。


「他に好きな人でもいるんですか?」


面倒なタイプの人だったか………


「そういうわけじゃないんだけどね……」

「なら、試しに俺と付き合ってくれませんか?」

「いや、試しにって……それは、あなたにも悪いし」


名前すら教えてくれない人。それで付き合えると思っているのか、このまま会話を続けていけば“ねー“とか“おい“とか“お前“が名前になりかねない。


「絶対俺の事好きになると思うんで俺と付き合ってください」

「ごめんなさい。多分あなたの事を好きになることはないと思います」


食い気味に断って再び頭を軽く下げてから振り返って来た道を戻る。

これ以上話してても“お前“の事は好きになることはない。



「悠木涼の事が好きなの?」



歩いていた足がピタッと止まった。


なんでここで涼ちゃんの名前が出てくるんだろう?

私が涼ちゃんを好き?


確かに私は涼ちゃんの事が好き。でも、そこには恋愛感情は含まれてない。


「最近仲が良いんでしょ?あ、もしかしてもう付き合ってたりする?」

「は?」


なんなんだ。さっきまでは口調も丁寧だったのが今はタメ語な上、不躾な話をズカズカとしてくる。


私はちらっと振り返って相手の顔を見る。

さっきまで真剣な表情をしていたのに、今ではヘラっと笑って私を見ていた。


「あなた―――「凪沙」」


私が口を開きかけた時名前を呼ばれた。


声がする方へと視線を向けると手を上げながらこっちに向かってくるちさきちゃんが見えた。


「なかなか戻ってこないから迎えに来た。――何?まだ凪沙に用があるの?」


ちさきちゃんの登場に“あいつ“は嫌そうに睨んでいた。


「いや別にもうねぇよ」


舌打ちをして“あいつ“は校舎に向かって歩いて行った。



「ありがとう。ちさきちゃん」

「最近多くない?」

「うん。今週3人目」


球技大会が終わった後あたりから何故か告白される回数が増えていた。


「律儀に呼び出しに応じる事ないんじゃないの?」

「でも、来ないで待たせちゃうのも悪いし」

「あいつみたいな変なやつだったらやばいじゃん。何されるかわかんないよ?」


わざわざ時間を作ってまで呼び出しているのにほっとく訳にはいかなかった。それで変な噂でも立てられたりしたらそれはそれで面倒になるからだ。


呼び出しが多いのはほとんどの人がメッセージアプリの交換をしてない、ろくに会話もした事がないような人達ばかりで、さっきの人みたいに名前すらわからないような人が多い。


「心配してくれてありがと。でも、大丈夫だよ。今までだって平気だったから」

「マジで気をつけなよ」

「うん」


2人で教室に戻る。


お昼休みの終了間近。教室にはほとんどの生徒が集まって午後の準備をしていた。

わざわざお昼休みに呼び出して告白されるのはちょっと嫌だった。ゆっくりお昼ご飯も食べられないし………


告白場所が校舎裏なのも問題だ。校舎裏なんでそんなに人気なんだか……

実際校舎裏はすごく面倒ではある。昇降口から出て裏に回らないといけないから、それだけで時間のロスだ。


私は机から教科書とノートを取り出した。


『なぎさ♡ちさき』


ノートをペラペラめくっていくと結局勿体無くて消さずにいたちさきちゃん作の似顔絵が出てきた。

亜紀ちゃんにバレなければ大丈夫でしょ。


「あれ?まだ消してなかったんだ」

「意外と気に入っちゃって……亜紀ちゃんには内緒ね?」


「へーかわいいね。凪沙が描いたの?」


振り返ると涼ちゃんがノートを覗き込むように立っていた。


「これ、ちさきちゃんが描いたんだよ。可愛いよね」

「高坂が?ふぅん……」


涼ちゃんが私の机に置いてあったペンを持って


    ♡

   /\

  /  \

 /____\

   な|り

   ぎ|ょ

  さ|う


私のノートに相合傘を書いた。また一つ落書きが増えた。


「凪沙のノートに落書きしたらダメだぞ悠木涼」

「高坂がそれいう!?!?」


ちさきちゃんは口の端をニヤっとあげながら涼ちゃんを見ている。

ノートは先生に提出する前にはこのページを切り取っておけばいいだろう。


「それで涼ちゃんはどうしたの?」

「最近お昼休み、凪沙がすぐどこか行っちゃうから……」


男の子に呼び出されてるからなんてわざわざいう必要もないだろうから伝えてなかったけど、それが何回もあればもしかしたら涼ちゃんは不快に感じてしまったかもしれない。


「えっとーー。ごめんね?せっかくみんなでお昼食べてるのに……」

「凪沙は悪くない。お昼休みに呼び出す方が悪いわ」

「呼び出されてるの?先生とか?」


「毎日毎日先生に呼び出される訳ないでしょ」

「え、もしかして………」

「……」



涼ちゃんは不快そうに眉を歪めた。



読んでいただきありがとうございます。

カクヨム、アルファポリスで投稿している、ちさきと亜紀のサイドストーリー

【どさくさに紛れて触ってくる百合】もよろしくお願いします。


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