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お互いを恋に落とす事をがんばる事になった【本編完結】  作者: シャクガン
球技大会をがんばる事になった
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10月27日(10)

涼ちゃん達クラスの試合は圧倒的だった。


B組対D組はあっという間にB組が2セット先取して勝利していた。周りの応援していた生徒達も大盛り上がりの試合でさっきまでナイフを私に向けてたとは思えないほどの大興奮状態。


涼ちゃんと結ちゃんのコンビネーションも午前中より上がってきていた。


その後続けて行われたC組対D組の試合はC組が圧勝していた。バレー部員から打たれるスパイクは先ほど行われたB組のスパイクとは違い、床に当たるボールの音までC組の強さを物語っていた。


一緒に試合を見ていた涼ちゃんも「強そうだね」と苦笑いを浮かべていた。




「次が最後の試合か……」


ちさきちゃんが目の前に貼られている紙を見ながら呟いた。そこにはバレーの試合結果が書かれた表がある。総当たり戦で戦ってきた試合は5チーム中2チームが無敗で、次の試合が無敗の2チーム。


B組対C組


「次の試合で優勝が決まるんだね」

「流石にB組でも難しいんじゃないか?」


どちらも強いけど、さっきの試合を見ていてC組の強さは全然違った。

現役のバレー部員との試合じゃB組でも敵わないのではと思ってしまう。


コート内で次の試合に備えて体をほぐしている涼ちゃんはどこか緊張した様子に見える。


私たちのクラスが棄権したせいで試合順が変わった。連続して試合に挑まないといけないC組は疲れた様子はない。ちょっとはハンデにならないかなと期待したんだけど、運動部はこれくらいじゃ疲れないらしい……



集合の号令がかかる。


コートの外側には更に人が増えて、ネットを挟んだバスケ側からもこちらを見ている男子達がいる。


C組のサーブから試合が始まった。




「結!!」

「シャァ!!!」


涼ちゃんが上げたボールを結ちゃんが高く飛んでスパイクを打つ。

しかし、ボールはC組のブロックによりコート内に返ってきた。落ちていくボールを誰も追えず床に落ちてバウンドした。


結ちゃんのスパイクを軽々とブロックしてしまうなんて……球技大会とは思えないハイレベルな戦いをしている。


観客の生徒達は白熱したバトルを見て大声で応援して盛り上がっている。


それでもC組の方が強いみたいだった。


12−20


点差は開いている。ここからC組に追いついて逆転するなんてできるんだろうか……


B組のサーブが打たれる。

山なりのボールは確実にC組のコートに入って落ちていく。そこからあっという間にB組のコートにスパイクを打たれてボールは床に当たり跳ね上がった。


悔しそうにボールを睨みつけている涼ちゃんは汗で額に張り付いた前髪を片手でかきあげた。


一部の女の子達から歓声が上がる。――え?


「ねぇ、なんで今歓声が上がったの?」


隣で一緒に応援していたちさきちゃんに尋ねた。ちさきちゃんは私がブラックコーヒーを飲んだ後のような表情をした。


「さぁ?」

「多分、涼さんが前髪をかき上げたのを見て歓声をあげたんだと思う。普段前髪おろしてるからおでこ見えることもあまりないし、あの仕草ってかっこいいんじゃないかな?」


ちさきちゃんの隣に立っている亜紀ちゃんが代わりに答えてくれる。

確かに前髪をかきあげる仕草ってかっこいい。うん。涼ちゃんもかっこ良かった。


「なるほど……」


右の女子達、左の女子達。涼ちゃんを応援してる女の子達の割合が多そうだ。

涼ちゃんがスパイクを打つたびに歓声が上がっている。


「あ………」


ちさきちゃんが小さく声を漏らした。

私がちさきちゃんの見ている先を目で追うと、14−25のスコアボードが見えた。


涼ちゃん達のクラスは第1セットをC組に取られてしまった。



1セット目が終わりインターバルに入ったと同時に何故か涼ちゃんが私たちの所に駆け寄ってきた。


「凪沙、ちょっと来て」

「んぇ?えっ!?何?なに!?」

「いってらっしゃ〜い」


ちさきちゃんがニヤニヤと見送ってくる。何?その表情!?


いつかのちさきちゃんの時と逆の立場になっていた。


私の手首を掴んで、試合を見ていた生徒達の間を抜けて体育館を出ていく。

どこに連れて行かれるのかわからないまま、手を引かれながら涼ちゃんについていく。





「な、何?どうしたの??」


すぐ目の前に向かい合っている涼ちゃんに問いかける。


ここはトイレだ。


私の後ろには便座がある。トイレの個室だ。


体育館のすぐ近くのトイレではなく、少し離れた女子トイレの個室に2人して入っている。


「えっと……体育館で抱きついたら結に怒られたから?」


E組との試合前に涼ちゃんが私に抱きついてきた時、その後結ちゃんに怒られてたっけ……

私も周りの視線の鋭さには居た堪れなかった。


「ん?ということは涼ちゃんは今から私に抱きつこうとしてるの?」


コクリと涼ちゃんは頷いた。

私に抱きつこうと思って私はトイレの個室に連れてこられたのか……


「……なんで?」

「………」


ギュゥゥゥ


無言で抱きついてきた。

背中に腕を回され、力強く抱きつかれる。


「第1セット取られてちょっと落ち込んでた……」


涼ちゃんが耳元で話し始める。吐息が耳に触れてくすぐったくってちょっとゾクっとした。


「こうすると頑張れそうな気がする――(東雲の言った通りなんか安心する)――」


最後の方はよく聞き取れなかったけど、涼ちゃんが頑張れるなら――

私も涼ちゃんの背中に手を回して抱きしめ返した。


「頑張ってね涼ちゃん」




試合開始ギリギリになって体育館に戻れば、結局2人で消えたことに対しての恨みなのか、周りからの視線というナイフが再び刺されることになって私はちさきちゃんと亜紀ちゃんの後ろにまた隠れることになった。


読んでいただきありがとうございます。

カクヨム、アルファポリスで投稿している、ちさきと亜紀のサイドストーリー

【どさくさに紛れて触ってくる百合】もよろしくお願いします。



次回9月1日投稿予定

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