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お互いを恋に落とす事をがんばる事になった【本編完結】  作者: シャクガン
球技大会をがんばる事になった
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10月27日(4)

D組が打ったサーブは山なりでA組のコートに入ってくる。

寺田さんがレシーブをして高く上がったボールを私は追いかけてトスを上げた。

上がったボールを山野さんがスパイクした。


バシッ!!


ボールは相手チームのコート内に落ちて弾んだ。


「山野さんナイス!!」


みんなでハイタッチをする。私も片手を上げて山野さんにハイタッチをした。

12−13…得点は拮抗している。得点を取っても取り返される状況でなかなか点差が開かない。


あまり長引かせたくないな……この試合が始まった時はまだ良かったけど、徐々に痛みが増している気がする。


垂れてきた汗を手で拭った。


杉本さんがサーブを打つ。大きく山なりになって相手コートに向かって落ちていく。

D組もレシーブからトス、スパイクと私たちと同じように役割ができているみたいで割と身長の高い子がスパイクを打ってきた。


「凪沙!!」

「はい!!」


ちさきちゃんがレシーブしたボールを私がトスを上げるために追いかけて手を出した。


〜〜っ!!!しまった!!!


上手く上がらなかったボールが落ちていく。


すぐ山野さんが反応をしてレシーブの体制になり、相手コートにボールを戻した。





1セット目の試合は相手チームに取られてしまった。

痛みが増してくるにつれて徐々にトスが上手く上がらなくなっていって、点差もどんどん開いていった。


ボールを上げることができない……


私は内心焦っていた。


他の人にポディションを変えてもらう?いや……ダメだ……そんなことしたら、怪我していることがバレて試合に出れなくなるかもしれない。私が出れないだけならまだいい。最悪A組の棄権……これは1番避けたい。私のせいで試合すら出来なくなるなんて………絶対ダメだ。



2セット目の試合が始まってから、山野さんの動きが変わった。


「東雲さん!!」


山野さんがトスを上げる。

亜紀ちゃんがタイミングを合わせてスパイクを打った。

相手コートにボールが転がる。


「ナイス!亜紀!!」


みんなが亜紀ちゃんにハイタッチをした。


私はそれを呆然と見つめる。


2セット目が始まってから私がトスを上げる回数が格段に減っていた。

代わりに山野さんがトスを積極的に上げていて、亜紀ちゃんがスパイクを打っている。


もしかして山野さんに気づかれた!?

トイレで鉢合わせた時も私がトスを上手く上げれていないのを気付いていた。


でも、だからって――

ここで平気なフリをしなきゃいけない。ここまでみんなで頑張ってきたのをおしまいにしない為に私はトスを上げなければいけない。私が何もしないで6人対5人の状況にしちゃえば必然的に不利な状況になる。


亜紀ちゃんが手を上げて私に近づいてきた。


1セット目を終えた後よりも随分と息が上がってきているみたいだ。山野さんがトスを上げていることでスパイクを打つ役割が亜紀ちゃん1人になってしまってかなり負担が増えている。


元々亜紀ちゃんは文学少女。運動神経は良くても体力的にはそこまでないだろう。私がトスを上げれば山野さんがスパイクを打てて亜紀ちゃんの負担も減るし、得点率も上がるはず……


こんな怪我大したことない。私はやる。


「ナイスキー亜紀ちゃん」


私は笑って亜紀ちゃんにハイタッチをした。

視線を亜紀ちゃんの後ろに向けると山野さんと目が合った。


困ったように微笑んで山野さんは相手チームに視線を移した。


何かに気付いていても何も言ってこないし、試合を止めないのは山野さんなりの優しさなのか、私にはとても有難いことだけど……このまま山野さんにトスを上げてもらう試合を続ける気はない。


勝ちたい。


相手チームに視線を向けた。


D組が打ったサーブボールがコートに入ってくる。杉本さんがレシーブを受けて上がったボールを山野さんが追いかけるけど、先に私がボールの下に入った。手を上げてボールを迎える。


痛みを無視してボールを上げた。


山野さんが何かいいたげに私を見た気がする。

そんな心配そうな目をしないでほしい……これは私がやりたくてやってるんだから。


亜紀ちゃんが打ったボールをD組は返してきて、私はまたトスを上げた。

山野さんが亜紀ちゃんよりも早いスパイクを相手コートに叩き込んだ。



25-22


接戦だったけどなんとか第2セットは勝ち取れた。

後半はトスを上げられた。それでも、山野さんがトスを上げにボールを追いかけるから、亜紀ちゃんがスパイク打つ回数はC組との試合よりも増えている。


亜紀ちゃんの息は荒い。


「山野さん」


第3セット開始前に私は山野さんを呼び止めた。

山野さんが不安げな表情を浮かべた。


「山野さんはスパイクを打って。私がトスを上げるから」

「え、で、でも……」


私の真剣な表情を見て、戸惑い狼狽えている。私があまり見せた事ない表情をしているのは自覚している。それでも、これは真剣に話さないと第3セットまで山野さんはトスをあげるためにボールを追ってくるだろうと思った。


「お願い」

「………わ、わかりました」


山野さんは眉を顰めつつ了承した。


「凪沙!このセット取ったら勝ちだよ!頑張ろ!」

「うん!」


インターバルを挟んでコートに向かう。


遠くで涼ちゃんと結ちゃんの姿が見えた。

目が合うと涼ちゃんは手を振って口パクで「頑張れ」と言っていて、隣の結ちゃんは手のひらをこっちに向けて目をとじ、念じてる雰囲気だった。多分パワーを送ってるんだと思う。


多分………


読んでいただきありがとうございます。

カクヨム、アルファポリスで投稿している、ちさきと亜紀のサイドストーリー

【どさくさに紛れて触ってくる百合】もよろしくお願いします。


次回8月26日投稿予定

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