10月16日(2)
「ぜぇ……はぁ…っぜぇ…」
「凪沙ちゃん!」
「はい!」
結ちゃんがレシーブしてくれたボールをネット付近でトスをして高く上げる。
バシッ!!!
私が上げたボールを涼ちゃんがバスケで鍛えた脚力で高らかにジャンプをして相手コートに打ち込んだ。
「うぉりゃぁ!!」
ちさきちゃんの横を抜けようとしていたボールに食らいつくようにちさきちゃんが腕を伸ばして片腕に当たったボールは誰もいないコートの外に飛んでいった。
「ぜぇはぁはぁ……はぁ……こんなの勝てるかーーー!!!!!」
スコアボードには12–3と無情な数字が並んでいる。ちなみに1セット目は25–6で私たちチームが1セット取っている。
「練習試合だから勝ち負けとか関係ないよ」
めちゃめちゃ相手コートにスパイク打ち込んで得点稼ぎまくってた涼ちゃんがそれを言っちゃうのか。
「一方的に打ち込まれて全然取れないし、ラリーも続かないんだから練習にもならないでしょ!!ぜぇぜぇ…はぁ……返せるのは山野さんがアンダーサーブで打ってくれたボールくらいだし。そっちはなんだ!凪沙を甘やかしてないか!?結ちゃんが上手に凪沙がトスしやすいところにレシーブしてるだろ!」
「トスしやすいところに上げるのは普通だと思いますー!!」
結ちゃんがちさきちゃんに噛み付いている。
ちさきちゃんの言っている事は尤もだ。ラリーが続かないんじゃ練習の意味がなくなってしまうし、ポディションも結ちゃん、山野さん、寺田さんがレシーブして私がトス、涼ちゃんがスパイクを打つという流れで来てしまっている。
「明日からはチーム分け偏らないように組もっか」
「そうして…今日はもう無理………はぁ…はぁ…」
朝のSHRも迫ってきていてそろそろ着替えて教室に向かわないといけない時間になってきていた。
着替えながら今日の練習で気になったことがあったので亜紀ちゃんに聞いてみた。
「亜紀ちゃんってスパイク打てるの?」
亜紀ちゃんが練習試合中に何回かスパイクを打って得点を取っていたのだ。ちさきちゃんチームは上手くトスが上がる事が少なかったから回数自体は少なかったけど、タイミングを上手く合わせて亜紀ちゃんがスパイクを打ってきていた。
「涼さんのを見てみよう見真似で打ってただけ」
「見よう見まねで打てるなんて凄いね!亜紀ちゃんがスパイク打てるなら山野さんと2人でポイントゲッターだよ!私は頑張ってレシーブとトス練習するね!」
私はスパイク打てるほどのジャンプ力もないし身長もないからトスとレシーブが中心になりそうだった。
亜紀ちゃんがスパイクを打てて得点を取れるようになったら、A組のチームも勝てそうな気がする。
「凪沙はトス練習だけでいいんじゃない?」
「え?」
ちさきちゃんがシャツを着ながら話しかけてくる。それを聞いていた山野さんも頷きながら話し出した。
「そうですね。天城さんはトス練習中心でいいと思います。今日の練習を見てても筋が良さそうですし、球技大会まであまり時間もないので、確実にトスを上げてくれるようになれば得点も稼げるようになるかと…」
「あたしと寺田さんと杉本さんが頑張ってボールを拾って、凪沙がトス、亜紀と山野さんがスパイクを打って得点を取る。そしたらB組にも勝てるかもしれない。悠木涼のボールを取れるように練習頑張ろうね」
そう言ってちさきちゃんは寺田さんと杉本さんにニカッと笑いかけた。
笑いかけられた2人はブンブンと首を縦に振っていた。
「凪沙!」
お昼のチャイムが鳴ってすぐ涼ちゃんがコンビニ袋を片手に私たちがいるクラスにやってきた。
まだ先生が教室にいるのに早すぎる。普段あまり涼ちゃんが私たちのいる教室に来ることがないから、クラスの人たちからも注目を浴びているけど気にしてる様子はなく、ニコニコとこっちにやってきていた。
「悠木涼、あんた目立つんだからもう少しちっちゃくなって入ってきなさいよ」
「えっ!?そんなこと言われてもなぁ…部内だと小さい方だからもう少し身長欲しいくらいなんだけど…結くらいしか身長勝ててないし」
「身長の話をしてるわけじゃないんだけど…」
ちさきちゃんは涼ちゃんをみながら息を吐く。
涼ちゃんは身長というよりはルックス的にも良いので余計注目を浴びてしまうんだと思う。
「ちさき。今日は屋上で食べよう」
「あー、そうするか。なんか目立ちそうだし」
亜紀ちゃんの提案でみんなでお昼ご飯を持って移動する。
屋上は解放されてるのは知っていたけど、屋上でお昼を食べるのは初めてだからワクワクする。
屋上なのであまり日陰になるような場所はないけど今日はそこまで日差しが強くなさそうで助かった。
亜紀ちゃんがどこから持ってきたのかレジャーシートを敷いてくれてみんなでそこに座った。
「凪沙今日もお弁当なんだね」
私の隣に座った涼ちゃんが私が出したお弁当を見ていう。
「私は時間ある時はお弁当だよ」
「え?もしかしてこれ凪沙の手作り?」
「うん。そんなに凝ったものは作れないけど…」
「すごい…」
涼ちゃんが目をキラキラさせながら私が開いたお弁当箱を覗いてくる。
「あれ?凪沙、今日はいつもより大きくない?」
ギクッとした。
毎日のように一緒にお昼ご飯を食べているちさきちゃんにはすぐにバレてしまった。
「――き、今日は朝練あったから…いつもよりお腹空くかなって思って…」
ふーんとちさきちゃんは興味なさそうにチョコチップメロンパンの包装を開けた。
涼ちゃんもコンビニ袋からおにぎり二つとお茶を取り出して亜紀ちゃんは静かにお弁当の蓋を開けた。
私は卵焼きを一口食べた。
「ねぇ、凪沙」
涼ちゃんが猫目な瞳を大きくキラキラさせながら口を開けて覗き込んでくる。
私はメインの一口ハンバーグを箸で摘んで涼ちゃんの口へ持っていった。
「おいしぃ」
目を細めてニコニコと美味しそうにしてくれてお口に合ったようで嬉しい。
「もっと食べる?」
「いいの!?」
首を傾げて涼ちゃんに問いかけると次は卵焼き食べたい!とリクエストまでしてきた。卵焼きも一口で食べて美味しいと喜んでくれて私が作ったものを美味しいって食べてくれるのって凄く嬉しい。
涼ちゃんも私が思っていたカッコ良い印象よりもずっと子供っぽくてとても可愛く感じてしまう。
私もお弁当を食べつつたまに涼ちゃんからおかずの催促をされて食べさせてあげたりを繰り返していると、目の前に座ったちさきちゃんから鋭い視線が突き刺さっていることに気づいた。いつからそんな視線を浴びていたのか全然気づかなかった。
「あんたら付き合ってんの?」
ちさきちゃんと亜紀ちゃんの方に目を向けると直球な質問が豪速球で投げ込まれた。
亜紀ちゃんはじっとこっちを見ている。何を考えているのかわからない…
「え!?いや…あの…」
ちさきちゃんからの球をキャッチできずに取りこぼす。
「まだ付き合ってないよ?」
その取りこぼしをキャッチした涼ちゃんが思わぬ方向に返球した。
読んでいただきありがとうございます。
カクヨム、アルファポリスで投稿している、ちさきと亜紀のサイドストーリー
【どさくさに紛れて触ってくる百合】もよろしくお願いします。
次回8月13日投稿予定




