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3.私は推しに嫉妬された



 「ここね、いっつもあそんでいるこうえんなんだよ~。さいきんはここで逆上がりのれんしゅうしてるの」


 公園に着いたので、私は鉄棒の側までれいやくんを引っ張って行き、そう公園の説明をしながらランドセルを近くに降ろした。


 「れいやくんは逆上がりできるの?」


 「おう。できるよ」



 「へー!すごいね!わたしできないんだ…」


 「見せて見せて!」とキラキラと目を輝かせてせがむと、照れ臭そうにしながら、クルリと一回転して逆上がりをするのを見せてくれる彼は本当にかっこいいし可愛い。


 ふと、そーくんがやけに静かだと気づいた。そーくんは私達の方を向いて俯いている。


 不思議に思った私が、「そーくん?」と呼びながら近づくと、ばっと勢いよく顔を上げ、その綺麗な碧の瞳には涙が浮かんでいた。


 「え…?そーくん!?どうしたの!?」


 私の慌てた様子におかしいと思ったのか、れいやくんもこちらに近づいて来て、そーくんに声を掛ける。


 「どうした?」


 心配そうに伺うれいやくんに気づいたそーくんは、れいやくんに向かってキッと睨みつけた。


 「ぼくだって!ぼくだって逆上がりできるのに!」


 「え?」


 いわゆる「僕だってできるもん!」と母親に主張をする子供(あれ?なんか違う?)のようなそーくんに、私とれいやくんは二人で声を漏らし固まった。


 「だいたい、お前はなんなんだ!りあはぼくのりあなのに!」


 (いや、別に私そーくんのものじゃないよ?)

 声を荒らげながら言うそーくんに、そう思ったものの、声には出さずにいた私。


 「べつにお前のじゃないだろ?」


 おい!?わざわざ私が飲み込んた言葉を!


 キョトンとした顔をしながら、サラリと火に油を注ぐ発言をしたれいやくん。いや、キョトン顔も可愛いけども!



 「うるさい!お前がいなければ!りあはぼくとふたりだったのに!ぼくはりあがいればそれでよかったのに!りあにはぼくがいればじゅうぶんだったのに!!」



 んんん?えーっと?話が読めないんだが??私なりに解釈するとつまり?そーくんは私がれいやくんに構ってるから、そーくんは私を独り占めできないと?そう言っている?ええぇ、可愛すぎかよっ!そーくん嫉妬してたとか、なにそれ、かわいい。だから、そーくんはれいやくんを敵視していたの?嘘やん。可愛い。


 「そーくん…」


 はわわ、と悶えるのを我慢している私に対して、「お前…マジかよ」と、そーくんに言いたげな表情のれいやくん。それを見て、あれ?そんな表情する理由あった?と、おそらくキョトン顔をしているであろう私の顔を見て、ものすごく微妙な顔をしているれいやくん。


 「りあ。ぼくだけじゃだめなの?」


 私がそーくんだけじゃダメなのかって、そりゃ、確かにそーくんは大事だし、そーくんといるのも楽しいけど、それはそれで、そーくん以外の人とも話したいよ?それをどう伝えるのかは難しいとこだけど。

 うんうんと悩んで黙っていたら、どうそーくんに受け取られたのか、分からないが、そーくんは悲壮な顔をした。


 「ぼくをすてないで?」


 いやいやいや?なんでそこに行き着くの?いや?確かに何やら勘違い?をしていらっしゃるようだったけど…。

 ってか、私がそーくんを捨てる捨てないなんて話はしてなかったよね?そもそも私がそーくんを捨てるとか、そんなのあるわけないじゃん。捨てるとか捨てないとかそういう問題じゃないし。

 でも、きっとこれはそーくんがずっと心の中で危惧していたことなんだろう。だから、そーくんは私が他の人と関わるのが嫌だったんだろう。そーくんは、私が他の人と仲良くなると、その分私がそーくんから離れていくかもしれないと思ったから。


 「そーくん。わたしはそーくんのこと、すてないよ?」


 私がそう言うと、そーくんはほとんど泣きながらしゃくりあげていて、それでも、「ほんとうに?」と問いかけてくる。そんなに、私がれいやくんと仲良くしているのを見て、私がそーくんから離れていくかもと不安になったのか?はあ、仕方ない。


 「ほんとうだよ!だって、わたしそーくんのこと大好きだからね!」


 そーくんの碧を見つめながら、にこりと微笑み断言する。すると、そーくんはようやく安心したようで、ほにゃりと微笑み返して、「ぼくも!」と元気よく返してくれた。あれ?天使かな?かわいいかな?

 そんな私たちの様子を一部始終見ていたれいやくんが、羨ましそうに見つめ、ボソリと「いいな」と呟いていたことなんて、そーくんに和んでいた私は知らないのだ。



◇◆◇◆◇



 「なあ。おれのこと、わすれてないか?」


 れいやくんに声をかけられて、ハッとれいやくんに気づいたので、申し訳なくなって速攻で謝る。


 「ごめんね、れいやくん。ゆるしてくれる?」


 直ぐに謝った私を見て、ニヤリと笑ったれいやくんは、「うーん。そうだなあ」と考えた素振りを見せた後、良いこと思いついた、と言わんばかりに、私を見てニコッとそれはそれはいい笑顔を浮かべたのだ。


 「ねえ、おれのこと、れいってよんで?」


 「え?」


 は?今、なんておっしゃいました?


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