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八話 砕け散る目

 ガッツポーズをしている間にゴーレムがぐんと立ち上がった。

 顔を押さえる丸い手の隙間から目がちらりと見える。


「罅割れてる?」


 ゴーレムの目は罅が入って端が欠けていた。砕けるような音はあれか。


「完全に砕けば動かなくなりそうだな」

『オオオオ……』


 左腕を握りしめた時欠けた目がふとこちらを向いた。

 ノースではなく、俺の方を。


「……⁉」


 つい一歩下がる。俺のその動きに合わせてノースが二三歩引いた。

 次の瞬間。


 オオオオオオオオ!


 ゴーレムが咆哮と共に大暴れし始めた。


「うおっ……下がれ下がれ!」


 俺は文字通り手のひらを返す。ノースが振り返り全速力でこちらに駆け出した。

 駆け出すノースの背後では、ゴーレムが両足を持ち上げては叩きつけ地面を破壊し虚空に拳を振るっている。

 あれは拳でもパリィするのは無理だな。


「狂乱状態かよ。近づいたら危な……あ?」

『オオオオオオ!』


 ゴーレムが俺たちに向かって駆けだした。


「おおおおおお⁉」


 その場で暴れるだけじゃないんかい! てかはっや!

 咄嗟に逃げ出したがゴーレムはずんずん距離を詰めてくる。追いつかれると思った時、ドゴンと一際大きく地響きが鳴る。

 ふ、と影が俺たちを覆った。


「あ……おああああああ⁉」


 振り返った俺の目に映ったのは、腕を広げ跳びあがったゴーレムの姿。

 嘘だろフライングボディプレス仕掛けてきやがった‼


「どっ、どっちに逃げ、左ぃ!」


 俺たちを覆うゴーレムの影には左腕が無かった。咄嗟にそちらを指示して無理やり方向転換をする。


「ぬあああああ!」


 影を抜けきりそれでもしばらく走って。

 やがて広場ごと砕けそうな衝撃が轟音と共に訪れた。衝撃は両側の崖すら揺らし、がらがらと広場に岩が降り注ぐ。

 とりあえずフィールドに影響は無さそうだが。


「あ、あっぶね……ゴーレムはどうなった」


 ゴーレムはボディプレスの後全身を広場へ投げ出して倒れていたが、すぐに手をつきぐいと体を持ち上げる。

 起き上がる際に体の一部がボロボロと崩れて落ちていった。


「あれ自傷モーションなんだ。なら何回もやってこないか……?」


 ゴーレムの体は岩が剥離する以外にも一部の罅がさらに広がって深くなっている。

 肩や胴、脚の辺りだ。


「……あれも弱点になるか? まあやってみよう」


 俺は落ち着いた様子のゴーレムへと再び近寄っていく。


『オオオ……』


 反応したゴーレムが腕を振り上げた。お、楽な行動だ。


「盾にも慣れて来たしな」


 俺は左腕を軽く握る。簡略化した動作でノースはしっかりとパリィの構えを取った。

 振るわれる拳を今度は下がりもせずノースは逸らし、ゴーレムがバランスを崩――さず。

 拳が裏拳になって帰ってきた。


「あ⁉」


 咄嗟にノースへ防御態勢を取らせる。パリィじゃないそれにゴーレムの拳がぶち当たりノースが弾き飛ばされた。


「ノース!」


 背中から倒れるノース、しかし同時にゴーレムも膝を着く。

 慌ててノースを立ち上がらせるがダメージは大して入ってないようだ。


「まだ行ける、か?」


 膝を着いたゴーレムへとノースを走らせる。裏拳をパリィし損ねたからか頭の位置が高く目は狙えなかった。


「なら」


 俺は深く罅の入った脚へ目を向ける。指を鳴らせば、立ち上がろうとするゴーレムの脚をノースが盾で殴りつけた。

 ごじゃ、と砂利の山を崩すような音がして脚の岩がごっそり削り取られる。二度、三度と削れば目に見えてゴーレムの脚は細くなった。


「そこも弱点だな」


 だがゴーレムは怯みもせず立ち上がりまた右腕を振り上げる。


「パリ……やばい違う退避!」


 ノースが逃げた後の地面に思い切り叩きつけが来た。ノースが拘束されるが動けないのはゴーレムも同じだ。

 俺はゴーレムへと近寄りながらじっと観察する。


「罅は目と違って致命的な部位でもないのか……何度も叩けば砕けるのかな。モーションの違いはHPが半分下回ったか、目への攻撃か?」


 やがてゴーレムより早くノースが拘束から立ち直った。しかし脚を一度攻撃しただけでゴーレムは復活してしまう。


「多人数ならもっと攻撃できたかな」


 まあ一対一の方が楽だ。色々周りに注意を払うのは向いてないしな……いや、クラウンと共闘はしてみたいか。


『オオオ……』

「でも今は大円盤だ」


 立ち上がったゴーレムが再び右腕を振り上げた。

 今度はたたきつけじゃない。ノースが拳を受け流す。


「裏拳も、来るとわかってればな」


 ゴーレムがバランスを犠牲にしてでも放ってきた裏拳に今度はしっかりとノースを構えさせる。

 薙ぎ払われる拳を下から突き上げるように叩くと、ゴーレムはどごんと頭から地面へ落ちた。


「あと何回だ?」


 ゴーレムの目が、またバギンと音を立てた。


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