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茶がゆ  作者: チャラン
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第五話 おばあちゃん

 田所は釣り人の忠告通り早めに朝田病院に戻った。朝まで粘るつもりだったが、病院に戻ったのは深夜の一時半頃だった。


「ああ、お帰り。ちょっと早く帰って来たんだね」


 祖母の病室では、まだ母親の初江が起きていた。祖母が心配なのと、慣れない病室で寝付けないのがあるのだろう。


「また、あのおじさんに会ってね。早く帰った方がいいって言われたんで、切り上げたんだ」

「また会ったのかい。不思議なおじさんだね」


 田所はうなずいた後、ベッドで寝ている祖母の様子を見た。すやすやと寝ていた。側に居る叔母の幸恵と叔父の崇も、座って寝ていた。


「おばあちゃんはよく寝ているね。よかった」

「私達も仮眠だけは取っておこう」


 初江はそう言うと田所に病院から借りた毛布を差し出した。


「おやすみ」


 田所は毛布を受け取ると、座り寝を始めた。




 朝になった。


 座り寝をしていた、皆はそれぞれ起き始めた。祖母も起きたようだ。


「おはよう、おばあちゃん。よく寝てたね」

「おはよう、おかげでよく眠れたよ」


 祖母は守を見てにっこり笑った。


「もう少ししたら御飯が来るからね、今朝も茶がゆの方がいいかい?」

「ああ、茶がゆが食べたいねえ」

「じゃあ、病院の人に言って、温めて来てもらうからちょっと待っててね」


 田所は持参していた茶がゆを持って、病室の外に出た。


 しばらくして温めた茶がゆと、病院の膳と一緒に田所が戻って来た。


「茶がゆを持って来たよ。病院のおかずも少しは食べてね」

「ありがとうね、守ちゃん」


 祖母はいただきますの格好をした後、茶がゆに手をつけ始めた。病院の膳も少しは食べているようだった。


「やっぱり、茶がゆが一番だよ。おいしかった」


 食事を終え、祖母は箸を置いた。箸を置いた後、急に体からかくっと力が抜けたようだった。


「おばあちゃん?」


 田所は、呼んでみたが返事がない。


 体を支えながら、口の前に手をかざしてみたが、息が無い。




 田所の祖母は亡くなった。


 危篤から一旦は回復したが、やはり心臓が弱っていたのが死因だったらしい。


 祖母の遺体は朝田島内の葬祭場に運ばれ、そこで葬式を行うことになった。


「持ち直したかと思ったけど、やっぱり無理してたんだな」


 祖母の霊前で叔父の崇が誰に言うともなくそう言った。


「あまり苦しまずに亡くなったのが、幸いだよ……」


 母親の初江はそう言ったが、やや落ち着きがなかった。その様子を見て、


「どうしたんだい? 母さん?」


 と田所が心配した。


「いや……ちょっとね、守、すまないけど、御香を守っておいてくれないかい? 私は別のことをしてくるから」

「? いいけど」

「頼んだよ」


 そう言って、初江は霊前から逃げるように出て行った。


「私も行ってみるわ、守君、お父さん、お願いね」


 叔母の幸恵も後に続いた。


「二人ともどうしたんだろう?」


 田所には、二人が逃げるように出て行ったわけが、全く分からなかった。しかし、叔父の崇はわけをなんとなく知っているようで、苦笑していた。


「守君、二人は怖いんだよ」

「怖い?」

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